一度だけ | ナノ
『尚ふっかーつ!!』
「ぬはは!尚ふっかつなのだー!」

翼とハイタッチをする。身長が高いから大変大変。頑張ってジャンプした。

「…酔うのも早いけど復活するのも早いんだね」

隣で梓が呆れている。
うわあ、さっきの梓は幻覚かなんかですか。そうですか。
そうだよね。バス着いた瞬間頭叩かれたし。いたかったです。

「ほら2人とも。早く着替えて行くよ」

着替え終わったらここに集合。いいね?と梓が仕切る仕切る。

『了解でーす』
「ん、じゃあ翼行くよ」

梓が翼の首根っこを掴んでずるずる引っ張っていった。
翼が「梓離すのだー!」と喚いていた。

私は女子更衣室に向かった。


ばーんと扉を開けると月子先輩が上を脱いでいた。

「きゃあっ!って、あ、尚ちゃん!」
『わーつっこ先輩細ーい!』

とりあえず閉めてー!と言われて気付いた。やっば扉閉めてなかった!てへ!

『ごめんなさいつっこ先輩!それにしても細い!憎憎憎たらしい!』
「ええっ?!」

嘘ですよーというと月子先輩はもうっ!と体操服を着た。

『あ、つっこ先輩は錫也先輩達とグループ組んだんですか?』

何の気なしにそう聞くと、月子先輩は「…うん」と答えた。あれ?

『…何か、ありましたか?』
「あ、………錫也と、哉太が喧嘩しちゃって」
『…は!?』

うそでしょ。自分の耳を疑った。
だって羊先輩と哉太先輩が喧嘩ってならまだアリだけど、錫也先輩と哉太先輩だなんて。

『何があったんですか?』

話せるのなら話してください。無理強いはしたくないです、と言うと

「実は、ね」

そう前置いて月子先輩は喋り始めた。


「…でも、どっちの気持ちも分からなくないの。錫也の気持ちも哉太の気持ちも」
『…少しだけ、一緒に行動しても良いですか?』
「え?」
『何が出来るかわからないけど、何か出来るかもしれないから。
錫也先輩も哉太先輩も好きだから、ぎくしゃくして終わりなんて嫌です』

私は後悔しないために動く。
あの時みたいになりはしない。だって一人じゃないから。
羊先輩も月子先輩も2人がそうなる事を望んでいないから、

きっとあの時みたいにはならない。

『さあ、行きましょ!月子先輩!ぶん殴ってやりましょ!』
「え、あ…うん!」

ほんと、殴って覚めるなら何発でも殴ってやるのに。
あのときだって
(誰か一発でもぶん殴ってくれれば)


2012.01.22 修正・加筆
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