一度だけ | ナノ
『おはよー』

そう言いながらがらーっと結構豪快に扉を開くと神話科の教室がしーんとなった。
え、あれえ。

「お前…大丈夫だったのか?」

一人が恐る恐る口を開いた。
え、なにが。

『あ、熱?大丈夫大丈夫。子供は風邪の子元気の子っていうでしょ!』
「それを言うなら馬鹿は風邪引かないな」
『ころすぞ!』
「いやだからそれも違くて、お前先輩に襲われたって聞いたんだけど…」
『あー…襲われてはないな!ていうか有り得ないんだけど!』

月子先輩が強引に言い寄られてたから殴られたんだー、と説明するとクラスメートが唖然とする。

「おい一応女子殴るとかそいつ最悪だな!」
『でしょー、って一応つけんな!』

そう言うと全員が苦笑いするから少しムカツク。誰か一人は否定しろよ!

『まあ大丈夫だから、心配させてごめんなさい』

そう言うと神話科の皆は大丈夫だったら良いや、だとか
今更お前に謝られたら怖いわ、だとか。最後のやつ放課後覚えとけ。

とりあえず皆私の事を心配してくれたらしい。なんだかんだ言いつつ皆優しいなあ。
思わず顔が緩んだ。緩んだ瞬間後ろの扉がガラガラスパーン!!!と豪快な音を立てて開いた。

『!?』
「天音ーーーっ!!」

うわうるさ!
反射で顔がゆがむ。私の姿を見つけて駆け寄り、両肩を両手で掴んでぐわんぐわん揺らす。

「大丈夫だったか!?」
『っ…、直ちゃ、せんせ…っ!!』

は、吐く!!!
必死で止めようとしても直ちゃんせんせーは聞いてくれない。
あはは、まさかの教室で吐くとかオワター!!と頭は実に能天気。

そんな事を考えていたら誰かが直ちゃんせんせーの頭を殴った。

「直獅、天音を放してやれ」
「虎太郎センセー!」
『こ、こたせんせー…!助かった!』

やっと直ちゃんせんせーによる揺さぶりが止まった。
口元を押さえて壁に寄りかかる。

『き、きもぢわるい…』
「うわー!ごめん天音!死ぬなあああ!!」
『し、んでないっす…おえ』

勝手に殺さないでくれ直ちゃん。

「まったく…見舞いに来たのにお前は余計悪くしてどうするんだ」
「ご、ごめんな天音!!」
『だ、…だーいじょうぶでーす』

ぐっと親指をたてるとその顔は大丈夫じゃないぞ!といわれる始末。
あーこれ朝から災難ーとか思ってたらよいしょ、という声とともに体が浮き上がった。

『は、』
「お前とりあえず保健室で休め。直獅はもうすぐHRの時間だから天文科の教室に行け」

随分とこたせんせーの声が近くで聞こえた気がする。ていうか顔近くないですか。

こたせんせーと一緒に私の目に映る景色も動く。
唖然としている神話科の皆が見えた。

ごめん、一番ビックリしてるのは私だ。

軽々と私を抱え、いつものようにずんずん大股で歩いていくこたせんせー。
やっと自分のおかれている状況を理解した。

お姫様、抱っこ…だと!?

『お、えええぇえああ!?』
「うるさい」

すいません、と即座に謝った。
なぜだ…。最近、抱きかかえられる事が多すぎる…!!
重くてすいません
(こ、こここたせんせー!?)(俺の名前に"こ"はそんなにないし五月蝿い)(すいません)


2013.01.22 修正・加筆
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -