一度だけ | ナノ
なんか羞恥プレイをされた後、錫也先輩にお説教をされましたinベッド。

「だいたい大声で叫ぶとかあるだろ?
どうしてまた一人で抵抗するなんて選択とったんだ」
『や、…月子先輩を守らなきゃと思って、』
「どうして自分を守るって選択肢がそこにないんだよ…」

はあ、とため息をつく錫也先輩。
う…、ごめんなさい。

「ていうか尚って男前なんだね」

羊先輩が能天気にそう放つ。
ちなみに羊先輩達は私の部屋の机の周りでくつろいでいる。
風邪が移るとか考えないのだろうか、この人たち…。

「そういう問題じゃないだろ、羊…」
『あの、反省してます…よ?』

そういうと錫也先輩は時じろりと疑惑の目で私を見つめる。

「…ホントに?」
『ぅ…ほ、ホントです!』
「…危険なときはちゃんと誰か人を呼ぶ事。
決して一人で戦うなんて事はせずにちゃんと逃げる事。
約束できる?」
『………約束します、錫也お母さん』
「茶化すんじゃない。…絶対守ってくれよ?」

はい、というといつもの柔らかい笑顔でよし、と言って頭を撫でてくれた。
くすぐったく感じて、少しだけ目を瞑る。
つい、笑みが零れた。

「何笑ってるの?気持ち悪いな」
『羊先輩酷いな…撫でてもらうのなんて久しぶりだなあって』
「ふうん」

そこでぴろりーん、と間抜けな音が響く。
あ、

枕の横に置いた携帯を手に取る。
通話ボタンを押し耳に当てると、

「よお尚」

梓の高い声が聞こえると思っていたのに、まさかの、

『え、あれ?犬飼先輩?あれ、これ梓の携帯じゃないの?』
「まあ深い事は気にすんな、大丈夫か?」
『あ、はい大丈夫でーす』

そか、と言って声が小さくなって何か聞こえる。
なんか、僕の携帯勝手にとらないでくださいとかなんとか。

ああ、梓の携帯使われてただけか。
そういや犬飼先輩に携帯教えてないや。

「尚?」
『おあ、梓だ』
「僕以外に誰が居るんだよ。大丈夫?」
『大丈夫ー、ありがと心配してくれて』

へらっと緩む頬。
心配されてんだなあ、あたし。

「あっそ、…僕いま部活中だからもう切るよ。
宮地先輩が睨んでるから」
『あ、うん』

それを合図かのように
「おい木ノ瀬!部下中に電話なんて、」と途中でブッと切れた宮地先輩の怒声が聞こえた。

「あ、そうそう尚ちゃん。これ一樹会長達から」

そう言って差し出したのは星月学園購買部のビニール袋。
受け取って中身を見るとプリンとゼリーがそれぞれ二個ずつ。
…こんなに食べられないぞ。

そして底にメモが1つ。

"これ食べて元気だすのだー!"
"ちゃんと寝て良くなってくださいね"
"これ食ってからちゃんと寝るように!"

「皆行けないからって、頼まれたの」
『ありがとうございます、』
「でもちゃんと元気良くなってね?」

そう月子先輩が笑って言う。わあなんか絶対マイナスイオン放出してるよ。
羊先輩も哉太先輩もそうだそうだ、と揃って言う。

「だからそのためにはちゃんと寝るんだぞ?」
『分かりました、オカン!』
「だから…もういいや」

諦めた錫也先輩がちょっとおかしくて笑ってしまった。
案外私も愛されているんだなあ
(と、思うのでした)
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