一度だけ | ナノ
錫也先輩はひょいっと軽々私を抱きかかえた。
小さい(148p)私は普通に足が浮く。わあ、この前の翼のとデジャヴー…って。

『す、錫也先輩!?』
「なに?」

おおふ…、怒っていらっしゃる…!
笑顔が怖いです、なんだこの最恐オカン。
バックの黒いオーラが消せてませんて。

『え、っと…その、自分で歩けます、よ?』

とりあえず自己申告をしないとどうにもなりそうにない。

「…だめ」
『はい…』

だめだ、これは何を言っても降ろしてくれない。
そう確信したので、黙って運ばれる事にした。重くてごめんなさい、と謝ると軽いから黙ってろ、と言われた。コワイヨー。


錫也先輩は私を抱えたままの私の部屋に入る。何故開いているかはこの際突っ込まないことにした。
そして私の部屋には月子先輩、羊先輩、哉太先輩が揃い踏みだ。

「何処行ってたの!尚」
「お前病人がウロチョロすんなっつの」
「尚、降ろすよ」

そう一言言って私はゆっくりベッドに横にされて降ろされる。
そして月子先輩が頭に濡れたタオルを乗せる。

「もうっ!心配したんだよ?」
『すいません…』

てへっと誤魔化そうとして笑うと月子先輩は笑い事じゃないの、と怒った。

「ほら、食べれるか?」
『え』

そう言って錫也先輩が私の前に出してきたのは小さい土鍋っぽいもの。なんだこれ。

『錫也先輩?』
「………お粥。温かいのが良いかなと思って作ったんだけど…誰かさんが黙ってどっか行っちゃうからなあ」

そう言って恨めしそうにあたしを見る。そんな目で見られるとこう言わざるを得ないというかいや罪悪感はありますけどね!

『ごめん…、なさい』
「宜しい。少し冷めたかもしれないけど」

そうお許しを頂き土鍋を開けるとまあ美味しそうなお粥。

『いただきます』
「ん、はいあーん」

………はい?
スプーンを受け取ろうと布団から出した手が固まった。

『え、や、あの!?』
「ほら、早く」

お粥の乗ったスプーンはあたしに向けられていて、
そのスプーンを持っているのは錫也先輩で、
錫也先輩は笑顔であーんを強要してくる。

まるで…おら、さっさと食えよゴルァと聞こえそうだ。いやむしろもう聞こえたぞ。

後ろの3人に助けを求めると、なぜだか、何故だか良い笑顔だ!
羊先輩と哉太先輩にいたってはニヤニヤしている。明らかに面白がってんなあのひとたち!

『や、あの…自分で食べ、ますから!』
「病人は甘えなさい。ほら、早く食べないと冷めるぞ?」

うああああ!なにこれ、苛めだいじめ!!

『ほんと、自分で食べますって…!』
「…」

拒否するとブラックなオーラを出してきた錫也先輩。ええええ!コワイヨー!

『っ〜…ぁ、ぁー…ん』

小さく口を開けると、錫也先輩はスプーンを突っ込んできた。
そして笑顔でこの一言。

「はい、もっかい口開けて」
(も、…もういいです!)(ダメだ、ちゃんと食べろ)((…錫也こわー…))


2012.01.22 修正・加筆
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