一度だけ | ナノ
Side Suzuya

月子が必死の形相で俺らのところへ駆けてきた。
そして開口一番「助けて」だったから何事かと、驚いた。

事情を聞いてまず駆け出したのは哉太だった。
それに続いて俺が走り出す。
羊が月子にここに居るか教室に戻っていて、と後ろで言っているのが聞こえた。


俺らが屋上庭園の入り口に来たと同時に尚が殴られて後ろの壁に頭を打ち付けていた。
『いったあ…っ』と呻き声のようなものも聞こえた。

「おいお前ら何やってんだよ!」

哉太が叫ぶと尚を殴ったらしい生徒たちがこっちを見た。
どうやら俺らの先輩らしい、情けない。

羊が追いついてきて尚の姿を見て目を丸くする。

「なに、尚の事あんなにしたのってあいつらなの」
「多分な。ていうかどう考えてもそうだろ?羊は尚回収してくれ、
俺は…哉太と一緒にあれを潰す」

あれとは当然の如く尚や月子に怖い思いをさせた連中で。
哉太は既に戦闘態勢。羊は分かったと行って俺らの横をするりと通り過ぎた。

さて、

「2人に恐い思いをさせたなら、今度は俺らが奴らに恐怖体験をさせてあげようじゃないか。なあ哉太?ああ、そうそうお前無理はするなよ?」

念のために釘を刺す。哉太は引きつった顔で振り向いた。

「錫也、恐えええ…!!いま俺凄い恐怖体験してる気分だ!!!」
「気のせいだ」

そうそう気のせい気のせい。俺は拳をあわせて軽く準備運動のようにぽきっと鳴らす。
さあ、せいぜい恐がれ。


Side Yoh

「尚、血出てるよ!」

僕がそう言っても尚はまったく反応せずぐったりしている。
きっと気絶している。地面にはじんわりと赤がにじんでいた。

「錫也!そいつら尚に怪我させてるよ!!」

徹底的に潰して貰わないと僕だって気が済まない。
だから手は出さないけど、これぐらいは許容範囲だ。

「羊、貴重な情報ありがとうな」

そう言って笑った錫也の笑顔は最上級に恐かった。

そして奴らに向き直り、
「哉太。徹底的にやるぞ」
(やってしまうが殺ってしまうに聞こえたのは気のせいだろうか…まあいいや)


2012.01.21 修正・加筆
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