長い入学式が終わり、私は背伸びをする。
ぽきっ、と肩のあたりの骨が鳴った。
「あ!」
大きな声。何かを見つけたような、そんな声。
声の方向に振り返るとヘアピンで前髪を留めた男子があたしを指差していた。
そしてその指差し男子に引っ張られるようにして前髪パッツンの男子。
「梓!居たぞ!」
「ちょっ、翼!痛いし早いよ!」
ん?あの前髪留めた奴は見た事あるな。…あ、さっき生徒会長から直々のご指名があった子だ。
「お前、今年の1年で唯一の女子なんだってな!」
私の眼前にやって来ていきなりそれを言い放つ。
『え、』
「気付かなかったのか?」
『寝てたからなあ…てへ』
「てへって…」
ぱっつんくんが呆れたほうに私を見る。
『そういえば名前は?』
流石に心の中でも前髪パッツンは駄目だよねえ。
「僕は木ノ瀬梓。このでかいのは天羽翼。どっちも宇宙科だよ」
『梓と翼、でいいの?』
「構わないよ。いいよね?翼」
「ぬっ?全然構わないぞー」
『私は天音尚、神話科だよー』
翼と梓。ああ、そういえば学年主席と次席がそんな名前だったような気がする。
梓はともかく、…翼はないな!同名の別人物だよね、うん。
「あっ、あのっ」
後ろで控えめに、そして高い声がかかった。
声に反応して振り返ると髪の長い女子生徒。スカーフが赤いからきっと2年生。
ああ、もしかして。梓の方へ体を捻る
『さっきの学園のマドンナさん?』
「多分そうだろうね」
学園のマドンナと呼ばれる理由に納得。超可愛いなこの先輩。
「天音、尚ちゃんですよねっ」
『うえへあ?』
ぐさっ、と脇腹に梓の肘が入った。痛い。
『あ、そうです!』
「あの、天文科2年の夜久月子です。よろしくね」
『よろしくお願いします!夜久先輩』
私はこの学園においての女子という理由の"よろしく"だと思ったら、
「友達になってくれませんかっ?」
『うえっ?』
初めまして、お友達になりましょう
(あ、あの?夜久先輩っ?)(だ、だめかな?)(い、いえ全然…!こちらこそお願いします!)
2012.01.21 修正・加筆