Side Tukiko
どうしようどうしよう…っ。
掴まれた手を動かしてもこの前に居る先輩は離してくれない。
男と女なので力の差はどう足掻いたって埋まらない。
タイミングの悪いことにここには哉太も錫也も羊くんも居ない。つまり一人だけで。
どうにかしないと必死にそんな事をを考えていると
『女子に4人とかかっこわるーい!』
茶化すような声が一段高いところの給水タンクから聞こえた。
全員が声の方に振り返ると同時に声の主、尚ちゃんが飛び降りた。
登場シーンが今の私にとっては正義のヒーローみたいだった。
月子先輩が目を開きこっちを見た。
待っててくださいね、私が出来るだけがんばりますから。
『人が昼寝してたっていうのに変なことしないでください!しかも私の月子先輩に!』
月子先輩を放して!と叫ぶと先輩の一人が
「は、女一人でなんか出来るっていうのかよ!」
『近づいたら怪我しますよ?なんつってー!』
挑発するように言った言葉に簡単に引っかかって向かってくる先輩。
女ってなめてかかってるから私は手加減しない。これでも一応武道の心得はあるので気絶するだけに留めます。
ぶあっと周りの空気を揺らすようにこちらに飛んでくる拳を流し、バランスを崩したところで首の後ろに手刀で一発。
他の三人には見えないようにやったので、多分どうなったのか分からないんだろう唖然としている。
だから残りの三人にはいきなりこいつが倒れたようにしか見えないんだろう。
『あちゃ、手加減忘れちゃった!この人運んでもらえます?』
「くそ…!!こんなチビに!」
『チビいうな!!』
でかけりゃいいってもんじゃない。(あれ、胸の話みたいになってしまった)
使い方が悪ければリーチが長かろうが力が強かろうが意味を成さない。
『月子先輩!こっちこっち!』
呆然としていた先輩の間を抜けて月子先輩は駆けてこっちに来る。
幸運な事に出口は私と月子先輩の真後ろだ。
「え!?でも、尚ちゃんは…!?」
『足止めくらいにはなりますよ。それに昔喧嘩の仕方習いましたから!』
2人で一気に逃げたって足の差もあるだろうから簡単に追いつかれるだろうし。
階段を降りた所で誰かに出くわせば良いのだけれどそんな可能性だけの話に賭けられない。
だからって私が逃げるわけにはいかない。
『はやく、私がんばりますから!』
「っ…分かった、誰か、呼んでくるから!!」
そう言って月子先輩は駆け出した。さしずめ今の気分は
姫を守る騎士のよう
(かっこよくなくてごめんなさい!)
2012.01.21 修正・加筆