一度だけ | ナノ
『…私の、ばか!』

頭を押さえて尚が呟いた、日の差す屋上庭園で。

しかも身に纏っているのはグレーで月子先輩と(ほぼ)おそろいの制服ではなく
カーティガンがメインの私服だ。

なぜ、こんな事になっているかというとそれは推定ではあるけれど数時間前にさかのぼる。


寝る前に携帯をいじっているとメールが入っていた。
読み終えてとりあえず携帯を閉じる。

『…』

…星見に行こうかな。
そう唐突に思ってカーティガンを着て部屋から出た。

部屋を出た後。
錫也先輩と、月子先輩達と一緒に見ようという約束をしているのを思い出した。
電話しようかと思ったけれど時間が時間だったのでやめにした。


カーティガンは持ってきておいて正解だった。寒すぎる。

『うはあ!今日すごい見えるなー…』

尚が寝そべると地面は冷えていた。


そういえば、と思いメールの返信を打つ。返信完了の画面を見て携帯を閉じた。

あー…一樹かいちょーにちょっと生徒会出れませんって言わなきゃなあ…。
…バスの定期、まだ日程あったっけ。そんな事思いながら目を閉じた。


――…そしてそこから記憶がない。

頭を押さえてため息をつく。…寝ちゃったんだろうなあ、どこのドジっこだ。
最上級のバカだ。おそらく人生最大級のバカだ。…や、そうでもないか。

しかも頭が痛いうえにダルイ。もしかして熱ひいたかも。

携帯で時刻を確認するともう昼休みの時間帯で。

…さすがに、私服で鉢合わせたらイカンよなあ…。
でも昼休み中に誰の目も触れずに寮に戻るのはツライ。

屋上から校舎を通らずに寮に行く方法なんて屋上から飛び降りるぐらいしか思いつかない。できるワケないよね!

そんな事を思っていると屋上庭園のどこかで悲鳴が聞こえた、女子の。
この学園で女子なんて私以外に一人しか居ない。慌てて行ってみると

「やめてくださいっ!!」
「そんな邪険にしなくてもいいじゃん」

月子先輩の手を掴んでいるのは見覚えがある先輩。
…この前、告白してきた人のような…そうでもないような。

そして月子先輩を取り囲んでいるのはその先輩+先輩の友達であろう人×3=4人。

そして月子先輩は自分から誘ったような態でもない。
(まあそんなことする先輩じゃないって事は知っているけども)

私服だということは頭から吹っ飛んで自分の居た所から月子先輩の所まで駆け出した。


映らぬ嘘と見える嘘
(女子に4人とかかっこわるーい!)


2012.01.21 修正・加筆
title by約30の嘘
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