一度だけ | ナノ
『グループ…?』

ホームルームで配られた貰った用紙をまじまじと眺める。
それは今度行われるオリエンテーションのグループを決めるもので。

そう、そこまでは良いのだけれど。
…私、そんなに友達居たっけ…?なんという悲しい事実。

「それ書いて先生に提出なー」
「「はーい」」

神話科の皆が元気に返事をする。
そして先生が出て行った瞬間仲の良い者とくっついて用紙に記入し始めていた。

どうしよっかなあ、と考えていると一つ良さげな案が思いつく。

先生に許可をとるべく教室を飛び出した。

『先生先生先生先生!!』
「…え、あ?俺か?」
『先生って呼びましたよ!!』
「ああ、悪い"生生"としか見えなくてなあ」

はっはっは!と豪快に笑う。

『視覚的感想やめて先生!!』
「おお、悪い悪い。で何だ?」
『このグループって神話科の人じゃなくても良いんですよね?』
「そりゃ構わんが…なんだ、友達居ないのか?」

先生直球!いまガラスのハートが…砕けてないけども。

『いや、否定はしませんけどね』
「まあいいぞー、期間内に出せよー」
『はーい!』

よし、了承を得たところで…宇宙科にれっつごー!


『梓ー翼ー』

扉から顔だけ出し名前を呼ぶと二人とも居た。ラッキー!
そして2人とも寄ってくる。

「どうしたんだー?」
『オリエンテーションのグループ、梓達と組もうと思って』

ぴらっ、と白紙の紙を見せる。

「ぬ?でも別の組と組んで良いのか?」
『ん、先生に許可貰ったし大丈夫』
「僕は別に良いけど…翼は?」
「俺は尚と梓が良いのだー!!」

ぎゅうっと抱きついてくる翼。
抱きつくのはいいが身長があるのがいかんせん痛いというか、重い。

『じゃあ私書いて提出しちゃうよ?』
「うん」
「あ、俺生徒会室行かなきゃいけない…2人ともじゃあなー!」

梓はぱっ、と私を解放し生徒会室の方へ走り出した。

『翼、忙しそうだねえ』
「うん、そういえば久しぶりに会うね」
『あ、そうだね。だいぶ会長にパシられてたからなー…』

毎日毎日毎日毎日…ずーっとお呼び出しがかかる。

一回無視して逃走していたら仕事を放って追いかけてくる始末。
颯斗先輩の仕事が増えてしまうので逃げるという選択はやめた。

『梓はこれから弓道部?』
「うん、そうだけど」
『見学行っていい?』

そう言うと梓は目を丸くして私を見つめた。

『…だめ、かな』
「や、ダメじゃないけど…尚がそんな事言うなんて意外だなあと」
『今日ヒマだからさー、生徒会もなさそうだし』
「まあ、良いんじゃない?じゃあ行く?」

そう言って梓は袴が入った鞄を持って尚と共に宇宙科の教室を出た。


弓道部に行き金久保先輩に許可を貰いに行くと「もちろん大歓迎だよ」と笑顔付きで言ってくれた。

ありがたく弓道場の隅で正座しながら弓道部部員が弓を引くのを見つめた。


Side Azusa


うわあ、あの尚が真面目に見てる。
そんな小さなことに少しだけ感動を覚えた。

「お願いします…む、なんだ見学か?」
「あ、宮地先輩。なんか今日"見学行きたい"って言い出したんですよ、あいつ」

珍しく少し遅れてきた宮地先輩に事情を説明する。

「へえ、綺麗な正座だな。背筋もきちんと伸びているし」
「やっぱり尚って弓道経験者なんだなあ」

背筋をぴんと伸ばし、たった今弓を引いている部長を見つめる姿は風格を思わせるもので。

「どうして、辞めたんだろう…」
「どうしてって、知らん」

独り言ですよ、そう言うと宮地先輩は眉間に皺を寄せた。
相変わらずこの先輩の気に障るポイントは分からない。
まあ、狙ってるときもあるけれど。

…ま、いっか。

そう思って自分の弓と矢を持って的の前に立った。

弓が的を狙って飛んでいく。
真ん中を貫いたと思ったのに、弓は空しく真ん中よりずれていた。


あれ、あんなとこ狙ってないんだけど
(…おっかしーな。僕真ん中狙ったんだけど)(あ、梓が外した)


2012.01.21 修正・加筆
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