屋上庭園までの道は案外暗かったりする。しかも春、寒い。
さくさくヘッドフォンをして道を進む。
ま、襲われるなんてないでしょ!とか思っていたら突然肩にぽんっ、と手がのった。
ヘッドフォンを一応外しゆっくり振り返る。
「…なにしてるの!」
『だ、だだだ誰だ貴様あああ!!』
「………」
なんだ、びびってないぞ!
…嘘です。お化けとか超苦手です!!スイマセン。ていうか誰だっけ、この声。
「………えーっと、尚ちゃん。錫也だよ」
『…と、東月先輩!?』
「そうそう」
『っ…ビックリしたあああ!』
思わずその場にしゃがみこむ。上からははっ、と笑い声が聞こえた。
『うわもう、笑わないでくださいよ!』
「ごめんごめん、…ていうか女の子がこんな時間にどうして出歩いてるの!」
『えー…屋上庭園に行こうかなって』
「だからってこんな時間に一人で…、」
頬を両手で挟まれる。あったかいな。
『だーいじょうぶですよ!襲われるなんてありませんから』
「駄目です、いけません」
『…東月お母さん!ごめんなさい!』
はあ、とため息が聞こえた。あれ駄目ですか。
「…ごまかそうとしないの」
『…スイマセン』
「今度からそんな事しちゃだめだよ」
『…気をつけます』
よし、と声がして頬を挟んでいた両手を離された。
『東月先輩はどこに行こうとしてたんですか?』
「ん?俺も屋上庭園だよ。一緒に行こっか」
『あ、はい。今日は3人一緒じゃないんですね』
「そりゃ…何時までも一緒ってワケにはいかないだろ?」
気のせいかな。
声色が少しだけ悲しげに聞こえた
(それじゃ行きます?)(そうだね。そういえば何聞いてたの?)(いえ防犯です!)(そういうのは携帯じゃないかな)(あ、そうか)
2012.01.21 修正・加筆