月とスピカ | ナノ






>>act.02

「おいお前らー!!席にうわっとお!!危ねって、う、わあ、ぎゃふん!!!」


『…ぎゃふんて』

初めて見た。ぎゃふんなんて言う人。
ていうか何が起こった。
教室内では笑い声が弾けた。
…なるほど、陽日先生はイジラレ役先生ですか。

「これ、天文科の毎朝恒例行事」
『はあ、なるほど』
「…笠原入れー!!」

がらっと開いた扉。
水嶋先生と喋っていたら、もう転入生を紹介するところまで進んでいたようだ。


『どうも笠原透で』
「トオルちゃん…?」「トオル…っ!?」

す。
自己紹介をしめくくろうとした言葉に被ったのはガタリッと響いた椅子の音と女の子の声と男の子の声。

女の子のほうはまさに清純モテモテ街道突っ走り組みたいな感じで。(誉め言葉だよ)
男の子のほうは銀髪でアクセつけまくり、でもモテそうな外見の持ち主。

『…?』

そのモテ組の二人が叫んだ自分の名前の読みは間違っていない。

「トオルちゃん、トオルちゃんでしょ!?」

僕のほうへ駆けてきてすがるような勢いで僕の名前を呼ぶけれど、
僕のほうは彼女に見覚えはない。

混乱していると、誰かがやめろと女の子を止めるために彼女の肩に手を置いた。

「月子、…座って。哉太もだ」

出てきたのは茶髪に青い瞳、優男っぽい感じでこれまたモテそうだ。

その男の子に止められて女の子は渋々といった体で自分の席に戻っていった。

でも自分の席に戻ろうとした止めた方の男子は一瞬だけ切なそうに、
もっと具体的に言えば何かを願うような顔で僕を見た。

これで席があの二人のどっちかと近かったら気まずいなあ、なんて思っていたら

「なんだ?笠原と夜久に七海は知り合いか?
んじゃあ笠原は夜久の隣なー」

陽日先生に空気を読むスキルはなかった。
水嶋先生が後ろで小さく吹き出していた。


陽日先生が先生じゃなかったら僕はきっと空気を読めと殴り付けていただろう。
(ついでに水嶋先生も)




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