月とスピカ | ナノ






>>act.08

「はっ!?え、ちょ…っ!?はあ!?」
『っ、…哉太五月蠅い…』

顔をゆがめる。いきなり耳元で叫ぶのは反則だ。是非ともやめてほしい。

「あ…わりぃ…じゃなくて!なんでお前…男装なんか!?」
『あー…実は、上にあ…じゃないや。
親戚のお兄さん的な人が元星月学園の生徒でさ、この制服はそのお下がりなんだよね』

ぴらっと制服を掴んでめくる。
哉太や錫也たちの制服とは少しだけ色が褪せている。

『というわけで、別に男装趣味があるわけではないからそこんとこよろしくー』
「いやよろしくって言われても」
『だよねー』

ははっ、と笑っていると錫也がこちらを凝視していることに気付いた。

『?錫也?おーい、錫也さーん?』
「っ、…あ、ごめ…なに?」

いやなにってワケでもないんだけど、と言うとそっかと笑っていた。
その笑顔が少しだけぎこちなかったけど。

『ま、月子は同じ女子同士よろしくねー』
「あ、うん透くん…って、女の子にくん付けはダメだよね…!」

ごめんね…!と謝る月子にきゅんとする。可愛いわー良いわー癒しだわー。

『透で良いよ?月子』
「う、うん!ね、あとで透の部屋に遊びに行っても良い?」
『もちろん。お菓子とか用意して待ってるから。
じゃあ先に行って用意してるわ』

じゃねー、と4人に手を振って自分の部屋に行った。


Side Kanata

「彼…じゃないや彼女、だいぶ飄々としてるよね…」
「だよなー。なっ錫也!」
「………」
「錫也?ちょっと錫也?」

さっきから錫也の様子がおかしい。月子の呼ぶ声にも反応しない。
どこか、ぼけーっとしている。

「………なあ、」

トオルの誕生日…覚えてるか、と消えそうな声が聞こえた。

「トオルの…誕生日?」
「…覚えてない。だってもう10年も前だぜ?」
「俺は、覚えてる。あいつの誕生日は、」

4月15日だ。

それは先ほど透が言った日付と一緒で。

姿が似ていて、名前が一緒で、誕生日も一緒で。


「なあ、こんな偶然…ありえるのか………?」







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