プリズムガーデン | ナノ

03
退屈な入学式。
定型文のような挨拶を右から左へ聞き流し欠伸を頑張って噛み殺す。

凄い注目されているのは学園には私を含め女子が二人しか居ないからだろう。もう一人の人は多分あのインハイの先輩。
遠くからでしか見れなかったけれど惚れ惚れするくらい綺麗で力強い射形だった。

もうすぐだ、とこの後の自分の予定を頭のなかで反芻しては笑顔になるのを必死に耐えた。
結果的に変な顔になってしまったが私のメンタルは鋼なので周りの目は気にならない。


入学式、HRが終わり私は弓道場へと行くために学園案内の地図を見上げる。
こうして図で見ても星月学園ってでかいなあ、なんて思っていると「どうかしたか?」と後ろから肩を叩かれた。

振り返ると茶髪の優しそうな先輩だった。

「ああ新入生かな?…って女子は月子しか居ないんだから新入生か」
『つきこ?』

独り言のように呟いたその名前に反応する私に俺の幼馴染みで君が来るまで唯一の女子だった奴だよ、とその先輩は笑って答える。

『もしかしてあの、弓道部の女の人ですか?』
「うん?そうだよ。もしかして弓道部に入部するのか?」
『そのつもりです』

そっかあ、と先輩は笑う。よく笑う先輩だなあ。

「それは月子が喜ぶよ。もしかして弓道場探してた?」
『あ、はい!広すぎてワケわかんないんですよ…』

私がため息を一つつくと先輩は俺の幼馴染みもよく迷ったよと懐かしむ様な笑顔でそう言う。

「良かったら案内しようか?」
『えっ、良いんですか!?』

それは願ってもみない提案で。なんだこの先輩良い人過ぎる。

「というか今から行こうとしてた所だし全然問題ないかな」
『もしかして弓道部の方とか…?』
「違うよ、幼馴染みに差し入れしに行くだけだから君も良かったらどう?」

そう言って先輩は片手に持っていた鞄からカップを出した。
私の前にそれを差し出してきたので覗かせてもらうと。

『ババロア…!!』
「ババロア好きなのか?」
『大好物です…!!ババロアがあったら一ヶ月は生活できます…!』

ババロア一ヶ月生活という挑戦があったら間違いなく挑戦する。そして成功させる自信がある。

「そっか。じゃあ一緒に行こう、たくさんあるんだ」
『ありがとうございます!!』

そうして私は優しくてよく笑う先輩に案内してもらった。

bkm


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