プリズムガーデン | ナノ

02
『なんで星月学園に行っちゃいけないの!?』
「当たり前だ!お前が進学する理由が木ノ瀬なんてふざけてる!」
『別に梓くんだけじゃないよ!』

夜な夜な兄たちと進学について衝突している。
主に言ってくるのはゆづ兄だけれど、ゆづ兄の隣のいづ兄もあまり言ってはこないものの不快感丸出しである。なぜ兄たちを説得するのにこんなに時間がかかるのだ。いい加減妹離れしやがれこのシスコンが。

『普通の科目だって勉強したよ!それに、っ頑張って星の勉強だってした!それに弓道部だって…っ』
「だからって、星月学園じゃなくったって」

インターハイが終わってからすぐに市立図書館で星に関する本を借りて読み漁った。
最初は仕方ないというか、星月学園に行くための勉強だと思って読んだけれど段々楽しくなってきた。
それに去年のインハイでの女子個人は星月学園の二年の人が優勝していた。だから、私も。


たとえそれの始まりが梓くんだったとしても。

『この…っくそあにき!!!』

兄たちを(お父さんと梓くんの次に)尊敬していると言ってもこんな頭ごなしに否定されたらいくら私だって怒る。
ゆづ兄がこらお前そんな言葉使うんじゃ、と説教モードに入ったので私は急いで自分の部屋に立て籠った。もうお兄ちゃんたちなんか知らん。

今回は例えババロアだろうがパフェだろうがなにを持ってこようが絶対に許してやらん。

私は決意を固めてベッドに寝転んだ。


「薙弦」
『…おとーさん』

夜中に私の部屋に入ってきたのはお父さんだった。
お父さんは万が一のために私たちの部屋の鍵を持っているから多分それで入ってきたんだと思う。

「弓弦たちから話は聞いたぞ」
『………お父さんも反対する?』

そう聞くとお父さんはまさか、と笑った。

「薙弦のやりたいことに反対したことがあったか?」
『…ない』
「じゃあ今回もそういうことだ」
『…お兄ちゃんたちは何を言っても分かってくれない』

ベッドのうえで体育座りをした私の横にお父さんが座る。

「弓弦たちは薙弦が心配なんだよ。ただでさえあそこは男子が多いいだろう?」
『…それは、そうだけど』
「それに全寮制だからあまり会えなくなる。それが寂しいんだろう」

あいつらもまったく困ったものだ、とお父さんは隣で苦笑い。

『…』
「薙弦のしたい様にやりなさい。もしものときは、お父さんも口添えしてやるから」
『ん…、ありがとう』

ベッドから立った私に弓弦たちはリビングに居るぞ、とお父さんは声をかけた。
どうやらバレバレらしい。お父さんには敵わない。


「薙弦…」

部屋から出てきた私に二人は顔をあげる。

『………ババロアとケーキとクレープ、買ってくれたら許す』
「…」

しょげている二人を見てなんだか許す気になった私も大概ブラコンだ。

「…食べたら歯磨きしろよ」
『…分かってる』
「薙弦、…太るよ?」
『い、いづ兄なんか知らん!!』

いづ兄は冗談だよ、と笑った。いやあの顔は冗談じゃないぞ。

bkm


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