プリズムガーデン | ナノ

12
「矢来さん」
『?どうしたの矢野くん』

矢野くんが授業中に私を呼んだので顔をあげる。
今の授業で分からないところでもあったのだろうか。どちらかと言えば私の方がちんぷんかんぷんさっぱりなので教えてほしいな!

「これ、要る?」

そう言う矢野くんの右手には授業中にも関わらず堂々と携帯が携えられていて。
携帯は流行のスマホ。センスの良いオレンジ色の配色でわー矢野くんセンス良いなあ、って。

『ぎゃあああああ!!!!』

白鳥先輩顔負けの奇声をあげてしまった。しかも授業中。
クラスの皆も、教壇に立った先生も目を真ん丸くして私を見つめている。
矢野くんは早急に携帯を隠した。あ、ごめん。

「ど、どした矢来!?」
『ななななんでもないですうう!!虫が居ただけなんです!はいガチで!』
「お、おお…そうか…」

私の勢いに慄いた先生は若干引きながら身体を黒板の方に向けてチョークで文字を書き始めた。
クラスメイトもなんだ虫かよ驚かせんなよとノートを板書し始めた。驚かせすぎてごめんね皆…!

「おまっ、お前ほんと意味分かんないから…!僕の携帯どうなっていたことやら…!」
『ご、ごめんだって…!』

あんなイケメンな梓くんの画像がスマホいっぱいに表示されていたのだ。
そんなのだって反応しちゃうに決まってる。

『あ、あれどうしたの…!』
「兄さんが矢来さんにって」

ほら、今度は予告されていたようなものなので奇声はあげずに済んだ。それでも胸のどきどきは先ほどと同じように高鳴っているわけだけれども。

梓くんは肘をつきながら考えるように少し憂いだ表情で黒板を見つめていた。
たまらん…!なんだこのレアショット…!やばい変態かもしれませんがどうしようもないので諦める!

「ちょ…矢来さん何その変な顔…」
『顔が、にやけそう、なので、頑張って、たえて、ます…!』
「にやける以前に変な顔になってるから!その努力くそ意味ないから!」
『ぬぐお…!く、や、矢野くん…この画像を私にプリーズ…!』

さすがに授業中なので土下座は出来なかったけれど机に頭を擦り付けて懇願する。

「うんそういうことで兄さんからメール貰ったから後でね」
『やった…!やったよ私…!』

とりあえず矢野兄改め楓さんイケメン…!

bkm


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