プリズムガーデン | ナノ

09
帰りのHRが終わり、私は寮に一旦帰ろうと思って荷物を手にとった。
そして廊下を歩いていると見覚えのある長い亜麻色の髪を携えた先輩。

『あれっ、月子先輩?』
「あっ薙弦ちゃん!良かったー見つけられなかったらどうしようかと…」

その言い方はつまり私を探していたということになる。
なるほど、だから一年生の階に居たのか。かなり目立ってる。

『私に用ですか?』
「うん!あのね、薙弦ちゃんもう入部届け出した?」
『あ、まだ仮入部期間らしくて』
「良かったら練習していかない?」

その言葉に思わず目を輝かせた。

『ほんとですか!?』
「うん、部長もね話したら見てみたいっていうから」

やった、弓道がもう出来るなんて思ってもみなかった。

『行きたい、行きたいです!今日はほんとは弓道場には行こうと思ってたんです!』
「じゃあ一緒に行こう!更衣室の場所とか教えてあげる!」
『あの、寮に弓道着とか道具とかあるので取りに行っても…?』

勿論だよ、そう微笑む月子先輩はほんとに女神か何かにしか見えない。梓くんももちろんだけど月子先輩素敵。


『お願いします』

二度目の弓道場に足を踏み入れる。
やっぱり弓道場のこの凛とした張り詰めた空気が好きだ。
自分の背筋がぴんと自然と伸びていくのを感じる。

「あっ宮地くん宮地くん!」
「む、どうした」

先に来ていたのはその一人の先輩だけだったらしく雑巾掛けをしている手を止めてこちらを見た。

「…こいつか?」
「うん!この子が矢来薙弦ちゃん!」

仏頂面のイケメンな先輩が腕組みしながら私の前に立つ。

「で、こっちが我が弓道部の部長の宮地くん!」
「宮地龍之介だ、よろしく」
『矢来薙弦です、入部するつもり満々なのでよろしくお願いします!』

頭を下げると宮地部長は元気は良いな、と呟いた。

「弓道は経験者か?」
『はい!えーっと…かれこれ10年くらいです』
「10年…!?」

私の述べた数字に宮地部長は言葉通り驚愕した。

「薙弦ちゃん、お家が弓道場なんだって」
「ああ…、なるほど。これは戦力になりそうだな。早速お手並み拝見したいんだが、良いか?」

はい、私はそう返事をして弓を取りだし弓掛けを手につける。

そうして的前に立ち右手に矢を、左手に弓を持って構える。
弓矢を上に掲げ、弓と弦を開き矢の先は的の中心へ。
キリキリ、と弦が張っている音を傍で聞ながら私は右手の指を矢から離した。

そうして、矢が当たった先は的の中心。
受験勉強で少しの間離れていたので少し不安があったけれどあまり落ちていなくて良かった。
ほっと安堵のため息をつく。

「流石だな…、基本の所作も射型も綺麗だ」
『…ありがとうございます』

褒められるのは素直に嬉しい、…けど。私は顔がひきつっていないかを心配した。

「凄いね、薙弦ちゃん!でもインターハイだとライバルだから負けないよ!」
『私だって負けませんよ!』

そう二人で言っていると、弓道場の入り口が開いた。

bkm


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