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『はあ?』
彼の、不知火一樹の言葉を聞いてまず出た言葉がそれだった。
『え、ちょ…ちょっと待ってよ!なんでそんな話』
そう。一樹が放浪の旅から帰ってきたのはつい三日前のことで。
「俺、マンションもう契約してきたぞ」
『…は!?』
学生時代も大概俺様だとは思っていたけれど、ここまでとは。
『…ひ』
「ひ?」
『一人で生活してろこのっばかずき―――っ!!』
一樹は私が席を立って玄関のほうへ走っていくのに数秒反応が遅れた。
散々一樹や翼くんを追いかけ回してやったのだ。
足で負ける気はあまりない。
『どうなのよ…あいつの無計画というか横暴とかはさあ!』
「まあまあ、夢先輩」
とりあえず家出先は哉太くんのお家にしておいた。なぜなら散らかしても私的に問題はないからだ。
私がダアンとテーブルを叩くと横に座っていた錫也くんが私の背中を苦笑いで軽く叩いてくれた。
「先輩荒れすぎだろ…」
『荒れるに決まってるでしょ!?なに一人で考えて勝手に行動しちゃってんのよ馬鹿じゃないの!?』
あーなんかまた更に腹がたってきた。
くっそ、あんなやつなんで私好きなんだろ…。
「大体いつでもどこでも一人でなんでもかんでも決めやがって…!」
向かい側で哉太くんが「壊れた暴走車みてー…」と至極失礼極まりないことをほざいていた。
あ、なんか哉太くんが一樹に見えてきた。今なら遠慮なく殴れそう。
なんて考えていたら、月子ちゃんが私に向かってこう一言。
「夢先輩、一樹会長に嫉妬してるみたい」
『…はい?』
月子ちゃんの言ってることがイマイチ分からず私は思わず聞き返す。
「だって夢先輩、一樹会長が全部一人で決めたことに怒ってますよね」
『…うん』
「それって、自分に相談してくれなかったことに怒ってるみたいですよ」
そう言われ、反論できなくなる。
俯いた私に錫也くんが頭をぽんぽんと叩いてくれた。
そしてそれと同時にピンポーンと鳴り哉太くんが玄関へ行き戻って来たと思ったら。
「夢先輩、迎えっすよ」
『え…』
迎えとか、誰それ親?と思っていると扉が開く音がして「夢!」と声がする。
『一樹…』
「勝手に決めて悪かった!帰ってから二人で話そうぜ。だから一緒に帰るぞ!」
どこまで強引なのよ、ばかやろう。
それでも私の優しさは太平洋並の大きさなので『ばか』と一言詰るだけにしておいた。
こんな強引な奴の彼女なんて私しか務まらないと思うのね。
変更不可なヒロイン
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