オルタナティブ | ナノ

02
晴れて入学式。
私は制服を身に纏い、部屋を出る。と、月子に出くわした。見るとパジャマ姿で私を見て目をぱちぱちと何度か瞬かせた。

「え、…星ちゃ…なにそれ…?」

それ、とは私が着ている制服のことだろう。
なんせ月子が部屋にかけている制服とはまったく装飾やら校章が違うのだから。

ここで「制服コスプレに今ハマってるんだよねー」とか誤魔化すとまずいことになりそうだ。
くそ、今までバレなかったのに。私はしょうがないとため息をつき説明を始める。

『私、天河学園に行くんだよね。実は』
「え…?」

月子は寝起きの頭だからか、それとも自分のキャパシティを越えた情報だったからなのか頭がついていけてないようだ。

『私は、星月学園には行かない』
「なん…っどうして…?」
『星月学園より、レベルの高い天河で挑戦してみたかったんだよ』
「なんで、いってくれなかったの…?」

月子の声はいっそもう詰るかのようだった。

『落ちたら格好つかないでしょう。…約束破ってまで行くんだから』
「そ、うかもしれないけど…」

ああ良かったやっぱり混乱してるみたいだ。
なんで合格判定を貰った日に教えてくれなかったのかと言われたらどうしようかと思っていたのだから。

「でも、…っ〜〜〜」

月子は何かを堪えるように俯いて、それから凄い勢いで私の方を向く。

「が、んばってね!」
『…ん。月子も哉たちと仲良くね』

それじゃそろそろ行くから、と私は月子に背中を向け母が待っているであろう玄関へ向かった。


車に乗り込んでから私は窓ガラスに頭を預けた。そして軽くため息。

あそこで、ガンバレが出るところ月子らしいなあ…。

ああくそ、私は目を瞑った。
自分と顔の良く似た、眩しくて優しくて可愛くて妬ましい妹。


だから、…離れたかったんだよ。



醜い自分

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