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掴む
じいっ、とまさに彼の行動に音をつけるのならきっとこんな感じの音だ。
私は精一杯体を引いているけれどそれでも彼は私に穴が空いてしまうぐらい見つめてくる。

『あの、東月くん…?』
「ん、なんだ?」

さらりと普通に問いかけてくる東月くんに私は動揺が隠せない。
えっ、これ普通なの。そんなまさか。
私は恐る恐る彼に伝えた。

『私の顔、何かついてる…?』

もう彼が私の顔をじいっ、と見るなんてこの理由しか考えられなくて。
世話焼きな東月くんならきっとそういう理由なはずで。

「いや、なにもついてないよ」

勘弁してください東月くん。
じゃあ何で私の顔をガン見なんでしょうか。
私の顔って随分と平凡だから見たって何も楽しくないと思う!

『えっと、じゃあ何で私の顔をガン見なのでしょうか…』

なんで敬語だ、自分。
心の中で突っ込むけれど放った言葉は引き返せない。
東月くんはにっこり笑って彼も取り返しのつかない言葉を放つ。

「可愛いなあ、って思って」


爽やかな笑顔で彼はそう放った。
さらりとまるでなんのことはないように。ああイケメンはこういうの言い慣れてるんでしょうね。
なんだか意識してる自分が物凄く馬鹿みたいだ。

そう思いつつ自分の頬には熱が集まってきて、それをまた東月くんに可愛い、と言われてしまったのだからきっともう手遅れなのだろうに。
掴まれた心臓


◎東月錫也
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