「大丈夫だから。絶対なまえのところに帰るから、だから泣かないで」
自分の手が、声が震えるのを必死に隠した。
なまえに悟られちゃいけない。イヤホンから聞こえるあの可愛くて仕方がない子に。
『ほ、んとですか?』
「ほんとだよ。僕が言ったら必ずそうなる。なまえも知ってるでしょ?」
『…うん』
「じゃあ待ってて、お願いだから」
分かりました、すすり泣くような声がしてなまえの声から司令官の声に変わった。
「…木ノ瀬」
「大丈夫です、…いくらこの作戦の確率が低かろうとそれでもこの方法しかないのならば僕らは全力を尽くします」
そう、いくら確率が一万分の一だろうがなまえに会うためならば僕はその1を引き当てて見せる。
たとえばそれが自分がこの船を操縦するために必要な嘘だとしてもだ。
ザーッとついには自分と指令室を繋ぐイヤホンにノイズしか聞こえなくなった。
隣の奴がくそっと言ってイヤホンを投げた。
ああ、最後くらいはこんな無機質な音じゃなくて愛しいあの子の声が聞きたかったなあ。
目にうつるのがこの広大で終わりのないところなんかじゃなくて彼女の笑顔を見たかった。
後は嘘をついてごめんと、ずっと愛しているからともっと伝えてればよかったな。
「なまえ、」
居ないのだって分かってる。イヤホンが通じているのかさえ怪しいのだから。
だからこれがもし一億分の一だとしてもこれだけは引き当てたい。
イヤホンが通じているのを願って、そして僕の最期の言葉がなまえに伝わるのを願って。
嘯く夢
(あいしてる)
◎木ノ瀬梓
自分の手が、声が震えるのを必死に隠した。
なまえに悟られちゃいけない。イヤホンから聞こえるあの可愛くて仕方がない子に。
『ほ、んとですか?』
「ほんとだよ。僕が言ったら必ずそうなる。なまえも知ってるでしょ?」
『…うん』
「じゃあ待ってて、お願いだから」
分かりました、すすり泣くような声がしてなまえの声から司令官の声に変わった。
「…木ノ瀬」
「大丈夫です、…いくらこの作戦の確率が低かろうとそれでもこの方法しかないのならば僕らは全力を尽くします」
そう、いくら確率が一万分の一だろうがなまえに会うためならば僕はその1を引き当てて見せる。
たとえばそれが自分がこの船を操縦するために必要な嘘だとしてもだ。
ザーッとついには自分と指令室を繋ぐイヤホンにノイズしか聞こえなくなった。
隣の奴がくそっと言ってイヤホンを投げた。
ああ、最後くらいはこんな無機質な音じゃなくて愛しいあの子の声が聞きたかったなあ。
目にうつるのがこの広大で終わりのないところなんかじゃなくて彼女の笑顔を見たかった。
後は嘘をついてごめんと、ずっと愛しているからともっと伝えてればよかったな。
「なまえ、」
居ないのだって分かってる。イヤホンが通じているのかさえ怪しいのだから。
だからこれがもし一億分の一だとしてもこれだけは引き当てたい。
イヤホンが通じているのを願って、そして僕の最期の言葉がなまえに伝わるのを願って。
嘯く夢
(あいしてる)
◎木ノ瀬梓