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攫う
◎ゾディアックパロ


ガシャンと私の部屋の窓が割られた。
そこに現れた影は紛れもない私の世話係。

警報器が煩くがなりたてるが、今の私にはまるで世界が音を無くしたように何も聞こえない。

『あ、ずさ…?』
「……寝ていてください、と申し上げたはずなのですが」

口調はいつも通り、ただ格好がいつもと違うし何より梓は窓から入ってきたりしない。

『え、なに、どういうこと…?』
「お嬢様!ご無事ですか!」

通常鍵がかけられている部屋を執事長がドンドン叩く。

「大丈夫です!僕も居ますから!」
「なら大丈夫ですね!只今強盗団が侵入したようなので決してお嬢様は部屋を出てはなりませんよ!」

そうして執事長が私の部屋の前からどこかへ行く。
強盗、団…?じゃあ、梓も…?私が梓に顔を向けるとそういうことです、と梓は笑った。

『っ…』

昔の記憶が蘇る。

「今日からこちらでお世話になります。よろしくお願いしますお嬢様」

にこりと、そう笑った顔は全部嘘だったの。全部全部、嘘だったの。

「僕らがここに来たのは紛れもなく盗みのためです。だから、僕が貴方の前に居るのは盗みのためです」
『…私の部屋に宝石なんてもの、ないの知ってるでしょ?』

あるのは生活できる必要最低限の設備と物。

「僕はそんなものに興味はないです。僕が興味あるのは貴方ですよなまえさん」
『わ、わたし…?』

ねえなまえさん、梓はにやりと笑いながら私に手を伸ばした。

「僕と一緒にこんな窮屈から出ませんか?」
箱庭から攫う

◎木ノ瀬梓/伊織さん
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