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絆される
『一樹会長!』
「…なまえ、」

思わずげっそりした顔をしてしまったのは断じて俺のせいじゃない。
そんなことはお構い無しになまえは俺に抱き着いてきてあの言葉を言う。

『好きです!』

10分休みの度に教室に来るこいつ。ちなみに本日3回目である。

「おう、サンキュー」
『もー!?いつになったらちゃんと応えてくれるんですか!?』

こたえて、が俺の脳内で「堪えて」に変換される。
…もう充分堪えてるっつの。

「悪いが俺は誰とも付き合うつもりはない」
『えっ一生独身なんですか…!?会長可哀想…』
「誰がだ誰が」
『もーだから私を貰ってくださいってば』

一体俺は何回この問答を繰り返せば良いんだか。

「つーか離れろ」
『やです』
「だー!このクッソ暑いなかくっつくな!」
『離れたら付き合ってくれます?』

なんでそうなるんだ、頭を抱えた俺になまえは離れませんよーと更に強く抱き着いた。


その日も、またそんなやり取りがあると思っていた。

今3限目。なまえの姿は今日の朝から見ていない。

「…なんなんだ、アイツ」

すっきりするかと思っていた俺は予想に反してもやもやを通り越してイライラしていた。

…いやこれは断じてあいつが好きとかではなくてだな。

とにかくそのイライラを解消するために電話を使いなまえの番号にかける。
3コールであいつが出た。

『一樹会長?どうしましたー?』
「お前今日なんで来ないんだ?風邪か?」

そう言うと数秒の間があって、

『今日は課外授業なんですよー』

と、…そういえば生徒会の予定表に書いていたあった気がする。

『会長…、まさか心配してくれたんですか?』
「…んな、わけねえだろ」
『会長!帰ったら一番に会いに行きますね!待っててくださいね!絶対絶対会いに行きま、』


ピッ、と怒濤の勢いで吐かれる言葉を強制的に終了した。

「ああクソ…!」

本来なら、げんなりするところなんだけどな。
絆された行く末


案外、嬉しいのは結局そういうことなんだろう。

こうなってしまっては仕方がないだろう。
帰ってきたら抱き締めてやろう。そして、そろそろ応えてやらなきゃいけないかもなあ。

携帯を弄りながらそんなことを考えた。

◎不知火一樹/七葉さん
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