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『えぇっと…翼、くん?』

肩に頭を置いた翼くんに抱き締められている。
私が名前を呼ぶとぎゅうっと私を抱き締める力が強くなった。

時計をちらりと盗み見すると時間は真夜中。いったいなんだっていうんだろうか。

『翼くん、どうしたの?』

できるだけ責める声音にならないように翼くんに問いかけると小さな小さな声でなにかを呟いた。

「夢、見た」
『?』
「なまえが、居なくなるのだ」

震えた声を出して彼は確かにそう言った。

『…ちょっと離して』

そう言うと翼くんは私の肩に乗せたまま頭を振った。
そんなに怖かったのかな、私は苦笑いして『一瞬だけだから』と宥めるように言うと翼くんの腕が緩んだ。
その間に体を反転させて翼くんの背中に腕を回す。

『…こうしてたら安心する?』

私がそう言うと翼くんは緩んだ腕をまた締めて「俺だけにしないで」と弱々しく呟いた。

『しないよ、そんなこと』
「…ほんと?」
『ほんと。私がウソついたことあった?』

翼くんは「…エイプリルフールのときは嘘ついてたのだ」…あれは、いやなんでもないです。

『じゃあこれはホント!』
「ホントに?」
『ホントにホントにホントにホント!』

じゃあ信じる、翼くんは頷いてからまた私に抱きついた。
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◎天羽翼/陽さん
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