200000 | ナノ
舐める
「…なまえ、」
『ふふぁい?』

正直今の私はアイスしか見えない。返事が疎かになる。
このキャラメル味のアイス美味しい…!

一樹先輩は出来るだけ甘くないものを選んでいた。緑からしてきっとミントなんだろう。

生徒会の買い出しに街に出ていたのだがあまりの暑さに寄り道してしまったのである。

「なまえ、前見て歩けよー」
『見てますよ失礼な!』
「俺はアイスに夢中で転けるお前の姿しか想像出来ないけどな」

転けるなよ、なんて楽しそうに笑いながら注意する一樹先輩に不覚にもときめいてしまった。
だって最近忙しくてあんまりデートらしいデートなんてなかったから、なんて心の中で言い訳を述べる。
まあ今回も生徒会の買い出しという名のデートなのだけれど。

「なまえ、それうまそうだな」
『そ、それ?』
「一番上のやつ」

トリプル(だって全部美味しそうだったんだもん…!)の一番上を指した一樹先輩。
た、食べたいのかな。私が一樹先輩の方へ差し出すと少しだけ顔を下げて私が差し出したそれを舐める。

「…甘、」
『だってキャラメルですもん』
「じゃあそっち、何味だ?」

今度指したのはアイスを飛び越えて私。え、は…味?

「…食っちまった方が早やいか」
『は、』

気付くと一樹先輩は私の方へ近付いて、唇の端をべろりと一舐め。

「甘いけど、まあこれはこれで美味いな」
君ごと舐める
(あ、馬鹿、アイス落としやがった)


◎不知火一樹/ももかさん
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