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憧れる

今日は卒業式で、私は後輩や先生に祝われるはずで。
だから何でこんな状況になっているのか分かりもしない。

『あのー、錫也くん』
「はい?何ですか?」

にこにこと笑顔を絶やさない自分の後輩であるはずの錫也くんは何故か私の両脇に腕をついている。

『えっと、何事?』
「先輩に告白しようと思って」

はい?と遠慮なしに聞き返してしまった私は悪くない。
だって錫也くんの幼なじみには超絶美少女の月子が居るのに至ってフツーな私好きになるとか何それギャグ?

「なまえ先輩が好きです、だから俺と付き合ってください」
『お断りします』

即お断りすると錫也くんは一瞬悲しそうな顔を見せたあと「なんでですか?」と聞いてきた。

『えーと、まず私は錫也くんのこと後輩としては好きだけど異性として見たこと無いのね』
「知ってます」
『うん、…うん』

そんなにあっさり即答されると少し困る。

『それにさ、年上に私しか女がいないからなんか錯覚起こしてるんだと思うよ?あの、うん…自分で言うのもあれだけど憧れとか、じゃない?』

私がそう言うと錫也くんは目を丸くした。あ、やっぱり。

「…憧れなんかじゃないですよ。なまえ先輩みたいなの憧れたりしません」
『もうちょっとオブラートにつつもうか!』

自分でも分かってるからそういう対象にならないことなんて!

「…先輩が信じてくれないのはわかりました」
『いや信じてないとかじゃなく道を踏みはじそうな後輩を正してるだけで、』
「一年、俺にください」
『人の話聞いてる?!』
「なまえ先輩待っててくださいね」

にっこりと笑った錫也くんに私は身が震えた。い、いやな予感しかしない…!
憧れなんかで片付けさせない

「なまえ先輩!会いたかった!」
『………何やってんの、錫也くん』

一年後、本当に錫也くんは現れた。
私の通う大学に新入生として、だ。ちなみに彼以外星月学園の生徒は居ない。

「だから言ったでしょう?憧れなんかじゃないって」
『あーはいはいもー…馬鹿なんじゃないの…』

ぎゅう、と抱きしめられて髪にキスされる。
馬鹿だこいつ、とか思いながら私もちゃっかり一年彼氏を作らなかったのだから人のことは言えない。


◎東月錫也/まめ吉さん
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