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気づく
「おい黄瀬、お前のアドレスの数字なんなんだ?」

唐突に笠松先輩がそう問いかける。

「お前の誕生日じゃないだろ?これ」

一応のためか数字を言ってから確認される。
笠松先輩はなんだかんだで優しい。

「俺の大切な子の誕生日なんッス」

そう言うと笠松先輩は眦を吊り上げて「彼女か!死ね!」と叫んで俺にグーで肩パンを入れた。
笠松先輩の肩パンは地味に痛い。
殴られた箇所を手で撫でつつ「違うッスよ」と言う。

「ま、彼女にしたいぐらい大好きな子なんッスけどね」
「結局自慢か!振られて死ね!」
「なんで!?」

まさかこの会話を聞かれてるなんて思いもしなかったのだ。



カチカチと携帯のランプが光る。メールが来ていたみたいだ。
衣装の帽子を机のうえに置いて携帯を開く。

見れば知らないアドレスだった。

文章を読めばどうやら俺の大切な子、なまえちゃんがアドレスを変更したようで可愛らしく絵文字つきで登録お願いしますと書かれていた。

アドレス帳に上書きするべく、アドレスに目を通す、と。ん?、と違和感。

そこにはなんとまあ吃驚。俺の誕生日が入っていたのだ。
は、え、ちょっと待って。頭が追い付かない。え、だってなまえちゃんの誕生日はこの日ではなかった、はずッス。あれもしかして俺間違えてた!?そんなまさか!

え、嘘。願掛けのように入れた数字がまさか間違えてたかもなんてそんなアホな!

変わってないはずの電話番号を画面に出してすぐに発信。
コールは二回で止まった。

『もしもし』
「こんばんわッス!なまえちゃんの誕生日って6月の18日なんッスか!?」

そう叫ぶように言うと数秒の空白があり、それから少しだけ笑う音。

『私も、黄瀬くんを見習ってみました』
「は、え、…っと?」
『黄瀬くんのアドレスにも好きな子の誕生日入ってるんでしょ?だから私も入れてみたの。だから私の誕生日は6月18日じゃないですよ』

まさか、ちょっと待ってくれッス!!
誕生日が合ってたのは良いとしてまさか本人に聞かれていたなんて!

って、ちょっと待って。

「好きな人の誕生日…、6月18日なんッスか?」
『はい』
「ちなみに、なまえちゃんの周りで6月18日生まれは何人ッスか」
『覚えてる限りでは、一人かな』

う、わ。ちょっと待ってこんな不意討ちみたいな。

「そ、れは」
『逆に聞いて良いですか?』
「あ、はいッス」
『黄瀬くんのアドレスのあれは、私の誕生日だと自惚れて良い?』
気づいたら止められない

「自惚れてくれないと、…困るッス」
『良かったー…、違ってたらどうしようかと』

きっと電話の向こうではへにゃりとした笑顔を見せているのだろうけど今さらながら電話なことが悔やまれた。
あとで直接会おうと決めた。


◎黄瀬涼太
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