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寂しがる
星月先生は、私の学校の保険の先生だ。だから、我儘は言っちゃいけないと思ってる。
そう、思っているだけで納得は出来なかった。我儘すぎて自分が嫌になる。


「みょうじ」

二人じゃないときは呼び方が苗字になる。

名前を呼ばれて確かに嬉しいのに、どうして下の名前じゃないんだろう。私は間違えて「琥太さん」ってたまに呼びそうになっちゃうのに。大人だから?

『…星月、先生』

後ろから呼ばれて振り返るとあの綺麗な顔がじっと私を見ていた。

「ふらふらしているみたいだが、大丈夫か?」
『気のせいですよ』
「…そうか」

私が笑うと星月先生は白衣を翻してどこかへ行ってしまった。
…もうちょっと恋人らしい何かあっても良いんじゃないでしょうか。私のこのぽこっと開いた穴を埋めてくれる何かをくれたって、良いじゃない。


「…ちゃん!なまえちゃーん!」
『はっ!』

どうかしたの?くるっとした瞳で首を傾げる月子ちゃんに私はなんでもないよと笑った。

『…(う…やばい、)』

私はだんだん頭がぼんやりしてくる。
さっき星月先生に言われたのはきっと睡眠不足で足取りがふらふらしていたのだろう。
あそこで素直にうんと頷けなかったのは単なる強がりなのだ。馬鹿だなあ、私。

「!なまえちゃん!?」

そんな月子ちゃんの驚く声を共に私は地面に膝をついてしまったのだ。

「だ、大丈夫!?」
『だ、だいじょう「ぶじゃないだろう」っ!』

後ろに立っていたのは、まさかの星月先生で少し怒ったような表情をしている。あ、これ絶対に怒られる。

「なまえは俺が運ぶから夜久は授業に戻れ」
「は、はい(い、いま星月先生なまえちゃんのこと名前で、えっ!?)」

私は抵抗する暇もなく星月先生に軽々と持ち上げられた。


「なんで言わなかった」
『…』

ベッドに寝かせられて、お説教中。星月先生は私を見下ろしてそう問い詰める。

「………俺のことが嫌いか」
『ち、ちが…!だ、だって、琥太さん私のこと、居なくても大丈夫みたいに、過ごしてるから…っ』

寂しかったんだもん、そう言ってる間に目尻から涙が伝って落ちる。
泣いたら面倒だって思われるのは分かってるのに。だってどうしても寂しかった。

「…そんなこと、あるわけないだろ」
『っ』
「平気なわけない。お前が他の男と喋ってると引っぺがして俺のだって言いたくなる」

俺は出来た大人じゃない、と私の頭を撫でる大きな手。

それだけで溜まった寂しさが払拭されていくのだから私は単純だ。
寂しさを拭えるのは貴方だけ

◎星月琥太郎/れいさん
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