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自惚れる
『東月くん、おはよー』

ふにゃっとした笑顔で俺に挨拶をするみょうじさん。

「おはよう、今日も可愛いな」
『も、もー!またそーいうこと言う…!』

顔を真っ赤にさせて俺を軽い力でばしばし叩く。そうして両手で自分の顔を挟んだ。

『なんだか最近の東月くんは月子ちゃんとお喋りする土萌くんみたいだよ…』
「あはは、そうかもしれないな」

そう言うとみょうじさんは訳が分からなかったようで首を傾げた。

「今日も髪、いじっていい?」

俺はみょうじさんのふわふわとした髪をいじるのが好きで毎日いじらせて貰っている。
まあその根底には多大な下心もあるわけだけども。

『東月くんは可愛くしてくれるから全然大丈夫!』
「ありがとう。それと今日のお菓子はマフィンな」

そう言って席に座ったみょうじさんに袋を手渡すとわーい!とまるで子供のように喜んで受け取った。
口一杯にマフィンを詰めて美味しそうに食べている姿はまるで小動物だ。
俺はそんなみょうじさんの後ろに回って、櫛を取り出して髪を梳き始めた。


「はい、できた」
『ありがとう!今日はお団子?』
「うん、それと付けてるピンはプレゼント」

鏡を見せながらそう言うと、みょうじさんはえっと声をあげた。

『わっ、悪いよ!』
「俺がみょうじさんに似合うと思って買ったんだよ、貰ってくれないと俺困るなー」
『うっ…!ず、ずるいよその言い方…!』

当然だ。みょうじさんはこういう言い方に弱いっていうのは知っている。

「貰ってくれる?」
『…も、らう!宝物にする!』
「はは、そんな大袈裟?」

俺がくすくす笑って言うと、みょうじさんは馬鹿にされたと思ったのか慌てて言い訳を始めた。

『だって!大好きな東月くんに貰っ…た、か…ら……』

声が小さくなるに従ってみょうじさんの顔が赤くなっていく。
え、ていうかいま何を。

「みょうじさ、」
『い、いまのはきかなかったこといしてくださいいい!!』

席をガタッと立って教室から逃げ出すみょうじさん。
え、今のは、完璧に、友愛とかじゃあ、ないよな…?

「これは、自惚れていいんだよな…?」

俺はその質問の答えを頭のなかでだして、そうして彼女を追った。
やっと、尻尾を捕まえたのだ。逃がしてやるほど、俺は甘くないんだ。
自惚れさせた、君が悪い

「みょうじさん!」
『と、づきくん…!』

俺が作ったお団子は微妙に崩れている、あとで結び直してやらないとなあなんて思いながら俺は後ろからその背中を抱き締めた。

「なあ…、さっきのどういう意味…?」
『わ、忘れて…!』

そういうみょうじさんの顔は真っ赤で目なんか涙目だ。

「ごめん、嬉しすぎて忘れるなんて無理」
『う、うれしいの…?』
「大好きな子に"大好き"なんて言われたら、そりゃもう嬉しいに決まってるだろ…」

そういうとみょうじさんは、東月くん私のこと好きなのと問いかけてきた。

「ああ好きだよ、大好きだ、…なまえは?」
『っ、』

耳元でそう囁く。答えは分かっているけれどだけど君の口から、聞かせて。


◎東月錫也/本宮遥さん
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