『(やばいどうしようどきどきする…!)』
夏休み、普通の生徒なら実家へ帰省していたり部活に励んでいたりするところなのだけど私は夏休み返上で生徒会室に来ていた。
しかも更に困るのは会長と二人きりだということ。
月子ちゃんはインハイに向けて部活中、颯斗くんは今日は外出、翼くんは梓くんと一緒に実家に帰省中だ。
『(もうやだ心臓持たない!)』
今日は猛暑らしくガンガンクーラーが付いているにも関わらず私の体は暑さを訴えている。
一樹会長は当然ながら半袖で逞しい腕や、第一ボタンを外しているので、その、さ、…鎖骨が…!
しかも「あちー」と言いながら首もとをパタパタさせるので余計に…!
「?なまえ、どうしたー?」
『なっなんでもないです!』
こんなに動揺していたらまるで「なんでもあります」と白状しているようなものだ。
現に一樹会長は私の方に寄ってきてほんとか?と問う。
やめ、近く来ないでえええ!!
「なまえ?休憩するか?」
『あ、え、う…』
「…つか、見すぎだろ」
ばーか、と言いながらくしゃって私の頭を撫でる会長。
え、なんで言った今。
「バレバレだ。どんだけ見てんだよ」
『…!』
「まあ俺がかっこ良すぎで見てたいっていうのも分かるけどな」
自信満々でそう言う会長に颯斗くんなら何を言ってるんですかと冷静に突っ込むだろう。
だけどそんな意地の悪い笑顔にでさえもどきどきしてしまう私は夏の暑さにやられたのかもしれない。
ときめきは真夏のせいに
◎不知火一樹/れいさん