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惚れる
『ちょ、わ、ああああっ!』

そんな叫び声と共に俺の視界が真っ白に染まった。

「へ、」
『ああああっやっちゃったあああ…』

散らばったプリントの中心に彼女が居た。名前は確か、…みょうじさん。

「大丈夫?」
『ひぃ!』

俺が声をかけると目にみえて怯えていた。
確か月子が言っていたのは彼女が男性恐怖症だったか。

「あの、大丈夫?」
『あああはい大丈夫です…!』

凄い怯え様だ。
俺は声を掛けて良かったのか悩んできた。
いやでも、このプリントの量は凄まじいぞ。

「良かったら手伝おうか?」
『えっ、いや、あのでも、』
「この量なら二人でやった方が早いよ」

というかこの量は軽く千枚はありそうだ。重かっただろうなあ。

『っ…、じ、じゃあ…あのお願いします』
「はい、お願いされます。じゃあみょうじさんはそっちの集めてね」

俺が指示を出すとみょうじさんはうん、と返事をして早速とりかかった。


「これで、終わりかな」
『あ、ありがとう…助かりました…!』

俺の腕の中にあるプリントは男の俺ならまだ少し重いかなぐらいで済むものだったけれど彼女にとってはかなり重かっただろうに。

「これ何処に運ぶの?」
『え、わ、悪いよ…』
「俺は男だからみょうじさんは使って良いんだよ」

俺がそう言うと、みょうじさんはうぅ…っと唸る。

『あっ!じ、じゃあそれ社会資料室に持っていっててくれないですか…?』
「良いけど」

「みょうじさんは?」そう問いかけると「後から追いかけます!」そう言って走ってどこかへ行ってしまった。

「…とりあえず運ぶか」

俺は言われた通り社会資料室に足を進めた。


『おまった、せっしましたっ!』

息も絶え絶えとはこういうことか。
みょうじさんは走ってきたみたいでぜーはーと荒い息をしていた。

「どこ行ってたんだ?」
『あ、っのこれ…っ!』

そう言われて差し出されたのは最近俺が気に入っている紅茶のパック。

「え」
『月子ちゃんから東月くん最近これが好きだって聞いたような気がして…』

間違ってた?不安げに聞くみょうじさんに俺は合ってると答える。
いや何より俺の名前知ってたのか。

『今日は助かりました!ありがとう東月くん!』

最上級とも言うべき笑顔で俺は何かが落ちた。
なにに惚れたって
(君の笑顔が好きだと感じた)

◎東月錫也/しらきくさん
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