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願う
◎こた先生視点


綺麗だな、俺がそう言うと君は純白を纏ってそれはもう幸せそうに笑った。

「幸せにしてもらえよ」
『うん!』

俺の幼なじみのなまえは今日をもって郁の嫁になる。
純白のウェディングドレスに包まれた彼女はお世辞なしにとても綺麗だ。

『こた兄にはほんとお世話になったなあ…』
「ああ、我が儘な妹にひねくれた弟が居たからな」
「ちょっとそれ誰のこと?」

なまえの声ではない声が非難する。
扉から顔を覗かせている群青はいま話にも出ていた。

『い、郁!』
「おいノックはルールだろ?」
「良いじゃない、今日くらいさあ」

そう言いながら体を完全に花嫁控え室に入れる。
郁も郁でベージュのような白のようなタキシードを着ていた。

『どうしたの?』
「一つ忘れ物しちゃっててさ」

忘れ物?首を傾げるなまえに郁が近づく。

「昔あげたペアリング、もしかしたら付けっぱなんじゃないかと思って」
『…あ』

郁が持ち上げた左手にはしっかりと嵌まったそれ。
ほらね、と得意気に笑う郁。
なまえは本気で忘れていたんだろう。いつでも自然に在ったそれを。

『それ、どうするの…?』
「そうだなあ…。ここには新しいのが嵌まるし」

思案しながら俺を見ていた郁が唐突にあ。と言う。
おい、何で俺を見るんだ。

「琥太にい、これ持っててよ」
「…なんで俺なんだ」
「巣立ちする僕らの肩代わりみたいな?」

嫌なら良いよ、なんて言う郁に駄目だなんて言えるわけない。
俺が手を出すと郁がその手に二つの環を落とす。キィンと触れ合う音がした。

『こた兄、あのね私が郁と一緒に居れるのはこた兄のお陰だよ、ありがとう!』
「…僕からも、ありがとう琥太にい」

二人が寄り添ってそう言う。手のかかる弟や妹みたいなもんだったけどな。

「なまえ、幸せにしてもらえよ。郁、幸せにしろよ」
未来を願う
(2つの環のように)(繋がる触れ合う未来をお前らに)


◎水嶋郁(星月琥太郎)
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