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口付ける
◎他校彼女

『も、やだ…』

私が漏らしたその言葉に一樹先輩が酷く動揺した。なんだそんなに動揺するぐらいだったら言わなきゃ良いのに。


ファミレスのテーブルを挟んで座っている私と一樹先輩。
久々のデートだっていうのに。

「月子な、あいつ料理の腕さえなかったら完璧なのになー」

なんで、会ったら全部夜久さんの話ばっかりするの。
久しぶりに会ったんだよ。

私は悲しい顔をしているかもしれないのに一樹先輩は何ともなしに話を続けている。

ねえ私のこと、見えてる?

『ごめん。も、帰ります』

耐えきれなくて席を立つ私に一樹先輩が不可解そうな顔をした。

「ちょ、待てよ。もしかして具合悪かったか?」
『そんなこと、ないですよ』
「じゃあなんで帰るなんて言うんだ、久しぶりに会ったんだぞ」

会いたくなかったか、そう問いかける一樹先輩。

『…今の一樹先輩には会いたくないです』
「っ、」

私は注文表を持って席を立った。
追いかけてこないことが、悲しくてでもそれも当然のように思えた。


会いたい、そのメールが何通も届いていた。会って話そう、と。
無理だよ、だって一樹先輩は私を見てなんかいないんだから。
返信もせずに居るとまさかの一樹先輩は学校まで来てしまった。

「なまえ!なまえの彼氏が来てるよ!」
『は、』

なにやってるんですか、あなた。校門に居た、とその子が言うので教室から見ると特徴的な制服と銀の髪。

『っ〜…!』

こんなの行かないわけにはいかないじゃない、そんな手使うなんてズルい。


『一樹先輩』
「…なまえ」

私が声をかけると一樹先輩はひどく安心したような顔を見せた。

「…メールもこないから会いに来た。ごめん、お前が何に怒ってるのか分からない」

だから怒った理由を聞かせてくれ、頼む。そう言って一樹先輩は頭を下げた。

『…いつも、一樹先輩が夜久さんの話をする度にお前より可愛いってお前より女の子らしいって比較されてるみたいで嫌だったんです』
「そんなつもりは、」
『なくてもそう聞こえちゃったんです、私は卑屈だしめんどくさいから』

一樹先輩が傷付いたように顔を歪める。違うんです、私が自分が嫌いだから。

『だから、』

それから続けようとした言葉は一樹先輩の肩に防がれた。

「ごめん、それは嫉妬したってみても良いよな?だったら俺はすげえ嬉しい」
『っ…』
「それに俺からしたらお前のが可愛いからな」

ごめんな要らんことで泣かして、そう言いながら私の目元を指で拭う。

『っ、私も、メール無視しちゃってごめんなさい…!』
「気にすんな。拗ねてたと思ったら可愛いもんだ」
濡れた目元に口付ける


◎不知火一樹/結華さん
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