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温める
私には好きな人が居る。
この学園のトップに君臨する不知火一樹会長だ。


『あ、今日七夕ですね』

私が書類を持って近づくと一樹会長があー…と唸るように声をあげる。
時計はもう10時を回っている。

「そういえば今日七夕だな…。時系列完璧に狂ってるかもしれないな…」

そういえば一樹会長は放課後から生徒会室に籠りっぱなしだ。
それはなんだか体に悪い気がする。

机に座ったままの一樹会長の腕を引っ張った。

「なまえ?」
『会長!息抜き、しましょう!根の詰めすぎは体に良くないです!』


唐突に思い立ったことだが一樹会長は容認してくれたらしく私を見てそうだな、と笑顔を見せてくれた。


『う、わ…!すごい、きれい!』
「ほんとだな、完成品を見るとやった甲斐があるよな」

お疲れさん、と頭を撫でられて心できゅんとおとがした。

「お前、短冊は書いたのか?」
『…あ』
「やっぱりな、ほら書いてこい」

そうして短冊とペンが置いてあるところに背中を押される。

や、やっぱり書くとしたらあれか!あれなのか!
私はドキドキ半分、びくびく半分でペンを滑らせる。

叶ったら良いな、なんて思いながら水色の短冊を笹に吊るして一樹会長の元へ戻った。

「なんて書いたんだ?」

そう問いかけてくる一樹会長に秘密です!と誤魔化して息抜きは終了した。


次の日、生憎の雨でまた生徒会室で書類整理に追われていると一樹会長がぽつりと呟いた。

「実はな、雨で笹を片付けたんだ」
『? はい、』
「そしたら偶然俺の前にこんなものが落ちてきてだな」

そうして出したのは二つに折られた水色の短冊。

「『初恋が実りますように』…お前だろ」

にやりと人の悪そうな笑顔で私を見る。
ばさばさと書類の落ちる音がして私の腕の中が一気に軽くなった。
初恋を温める

(へー、初恋なんだな。で相手は誰なんだ?)
(ひ、ひみつです!)

その赤い顔が語っているようなものだと、教えてやるのは遠慮しておいてやろう。


◎不知火一樹/佳菜子さん
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