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誘う

扉を開けて思わずはああああ…、と長いため息をついた俺は悪くない、断じて。

(なにやってんだよ、ほんと…!)

ああくそ、とか思いつつ悪態をついたそれから目を逸らす。
しかし耳に届く規則的な寝息。

俺は確かこいつが紅茶飲みたいっつーから錫也のとこまでわざわざ貰いに行っただけであり時間にして恐らく五分ほど。
なんで五分の間に寝てんの、こいつしかもスカートで!

ちらりと見えたいわゆる絶対領域が目に痛い。
え、これはなんかの試練ですか。俺は一体誰に試されている。

とりあえず、だ。このままでは迂闊に動けないので俺は上着を脱いだ。
ブランケットなんて気の利いたものは俺の部屋にはないし布団はなまえが敷いているしで仕方ないので俺は脱いだ上着を慎重に(見ないように)かけた。

よし、これで大丈夫。
そして念のため俺はベッドを背にして座った。

ここまでするともしかしたら羊や錫也に「ヘタレ」と笑われそうだったが、

(うっかりなんかしそうな可愛さだからな!)

あどけない寝顔を無防備にも晒している。
幼なじみという塀をつい最近越えたはずだ。だけれどこいつに俺は男だと思われてないんじゃなかろうか。

(それはそれで複雑だな…)

あーくそ、と頭をガシガシかいていると、後ろから哉太…と声が聞こえた。
起きたか!?と思わず後ろを振り返るとどうやら寝言だったようでころりと寝返りを打った。

まあ当然寝返りを打ったので隠していたはずの上着が滑り落ちた。

これは、誘ってるんですか?
(うん…?哉太…?おはよー)
(っのバーカ!!)
(いたっ!えっなんでデコぴん!?)


◎七海哉太/佳菜子さん
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