200000 | ナノ
頼る
「…」
『…怒ってる?』

恐る恐る聞いてくるなまえに俺はそっぽをむく。

「…これで怒ってないように見えるなら俺は帰る」
『…ごめんね、錫也くん』

なまえはえへ、なんて絆創膏がついた頬を動かして笑う。

『でも私には守る力があるんだよ』
「…俺にもあれば良いのに」
『それじゃあだめだよ、』

だめじゃない、なまえが傷つく方が俺はだめなんだよ。

どうやったらお前はわかってくれるの。
わかってるのかお前。誰かからなまえが怪我をしたっていうのを聞いたとき俺は毎度心臓が止まりそうになるのに。

なまえが傷つくくらいなら未来なんて捻じ曲げないで他の誰かが背負えばいいのに。

小さな体でだれかを守ろうとするその力は、彼女からしたら誇らしくて、でも俺からしたら憎くて消したくて君から取り上げたい。

でもそんなこと出来やしないのは分かってるからだから、頼むから。

「頼むから俺の知らないところで勝手に傷つくのはやめてくれ…っ」
『…』

ぎゅうと抱き締めるとなまえは俺の背中に腕を回した。

「俺は、お前がいないとダメなんだ」
『…私も、錫也くんがいないとだめだよ。だから怪我しちゃったら錫也くんが一番に来て、抱きしめてね』

それでお前の負担が減るのなら。
どうか頼る場所にしてください。

(…顔に傷つけたら怒る?)
(そんなので弾くような男に見える?)


◎東月錫也/結華さん
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