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恋う
錫也に誘われて少し遠出のデートでプールに行こうとなり錫也と水着を買いに来ました。
だってどうせなら可愛く見られたいじゃないですか。


『…これ?』
「うん、似合うと思うけどなー」

だから気合い結構入れて選ぼうとした矢先に錫也が差し出したのは白とピンクのシンプルな水着。
可愛い。確かに可愛いけれど私としてはもう少しばかり控え目なやつのほうが良いんだけど、な。
そう申告しようとしたら錫也はにっこり笑ってこう一言。

「ていうか、これな。俺払ってくるからここで待ってて」
『ちょ、えっ!?錫也!?』

私の止める声も空しく錫也はレジの方へと行ってしまった。
え、ほんとに?


「…」
『…そんな真顔で見ないでよ』
「なんでパーカー?」

真顔でそう問いかけてきた。無理に決まってる。だってお腹とか胸とか!足だってホントは隠したいんだよ!

『ていうか錫也だってパーカー着てる…』
「じゃあ脱ぐからお前も脱いで」

そう言って錫也は自分のパーカーをあっさりと脱いだ。え、むしろじゃあ何で着たの。

『…』
「ほらお前も。…脱げないなら俺が脱がしてあげようか?」
「自分でします」

なんたる羞恥ぷれい…!せめて後ろを向いてくれれば良いものを錫也はガン見でこちらを見ているし。
ええい!こんなのチャックおろして終わりだ!
チャックを思いっきりおろして錫也の顔を伺う。どうか私の腹とか貧相な胸に絶望してませんように…!

恐る恐る見上げると錫也は少しだけ目を開いて私を凝視していた。え、こわい。

『あの、…錫也?』
「…ごめんやっぱパーカー着て。あ、ていうか俺のパーカー着て」
『え!?』

驚く私を余所に錫也はまず私のパーカーを脱がし、そして自分のパーカーを私に着せた。何がしたいんだこの人。

『錫也…?意味がちょっとよく分かんない』
「分かんなくて良いよ」

そう言って錫也はジーっとチャックをあげる。
え、私の決意なんだったの。

「あとは、…」

あと何するつもりなんだ、この人は。
身構えていると錫也が私の首筋に顔を寄せて、何を思ったかそこを吸い上げた。

『い、っ!』

ちくりとした痛みが吸われたそこに走る。え、もう何なんですか一体。

私の思いとは裏腹に錫也はそこを見て満足げにうん、と頷いた。

『…え、なんだったの今の!?』
「ん?なまえは分からなくて良いんです」
恋う
(俺以外には見せたくない、っていうワガママだからさ)

◎東月錫也/凪さん
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