200000 | ナノ
叶える
『…!』

弓道場での自主練習を終えて、扉の鍵を閉めていると後ろに人影。
不審者だったらどうしようかと思っていると優しい声が私を呼んだ。

「なまえ、お疲れ」
『錫也、くん』

にこり、と笑ったのは私の彼氏でもある錫也くんで。

『どうしたの?』

よく見ると彼は私服でどうやら一度寮に帰っているようだ。
私は首を傾げてそう問いかけると錫也くんはころころと笑った。

「大事な彼女の送り迎えに来たんだけど?」
『!…ま、まだ明るいよ?』

西はまだほんのり朱くて、まだ錫也くんの顔も見れるのに。

「だーめ。それに、なまえと一緒に居たいっていうの分かってくれないかな?」

困ったように笑う錫也くんに私の顔はきっと真っ赤だ。

「…鈍い彼女ってこういうときは大変なんだよなあ」
『うっ、…ごめんなさい…』
「怒ってないからいーよ、だから一緒に帰ってくれる?」

お願いします、と私が言うと錫也くんはお願いされました、と言って私の手を掴んだ。


『あっ、…もうすぐ、七夕だっけ…』

庭園に飾られた大きい笹を見て思い出した。そういえば会長に願い事書いとけよと言われたのを思い出す。

「短冊書きに行く?」
『行きたいなあ…、錫也くんは?』
「俺もまだ書いてないから行こう」

そう言われ錫也くんは私の手を引いて笹の方へ連れていった。

『なに、書こっかな…』

ペンと短冊を手にして悩む。減量とか、弓道がうまくなるようにとか…書きたいことはいっぱいあるけど。
やっぱり、一番と言えば。私はそれを字にして短冊を吊るそうとした、ら。

「はい、ストーップ」
『え、っ』

錫也くんの大きい右手に阻まれた。
それに錫也くんは後ろから手を伸ばしているので必然的に後ろから抱き締められているような、っていうか左手腰に回ってる!?

「「錫也くんと一緒に居たいです。」か、」
『にぎゃああああ!読まないで!恥ずかしい!』
「うん、嬉しいよ。でもこれはちょっと却下」
『え』

え、つまりは私と一緒に居たくない?…泣いて良いですか。

「え、違うよ。居たいに決まってるだろ」
『だ、だって…!』
「だってそんなのお願いしなくても良いだろ?」
僕が叶えてあげるから
(そ、そうデスカ)(うんだから別のことにしようなー)

彼には一生勝てない気がする。
◎東月錫也/希里さん
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