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守る

ぱぁん、と派手な音が俺の頬の上で弾けた。
いってえな、そんなこと思ったけど目の前でぽろぽろ涙を流しているなまえを見たら何も言えなくなった。

『っ、…私は、』
「なまえ…?」
『一樹の荷物になるためにそばに居るわけじゃない…っ!』

しゃくりをあげながらそう言って、それから走ってどこかへ行ってしまった。
そして俺は一歩も動けず頭の中で言われた言葉を反芻していた。

荷物にした覚えなんて一個もない。
負担だと、思ったことなんて過去に一度だってねえよ。

「ああくそ…っ!」

俺は頭を掻いてその場にしゃがんだ。
恋愛というやつはほんとにままならない。


「なまえ、何やってるのこんなとこで」
『誉…』

誉がそんなとこ、と指したのは裏庭のベンチで、私はそこで体育座りをしていた。私が顔をあげると誉は目元に気付いたのか「一樹?」と苦笑しながら私の横に座った。

『一樹が、また星詠み使って、傷ついたの』

私がそれだけ言うと誉は分かったようで「ほんと二人とも馬鹿みたいだね」たため息をついた。

「どうせ一樹のことだからなまえのことでしょう」
『…でも、私のことで一樹が怪我するのは絶対に嫌』
「うんまあ…、なまえの気持ちも分かるけどね、」

今回はなまえが謝った方がいいんじゃないかな、そういう誉に私は思わずなんでよ!と叫んでしまった。

「一樹もね多分なまえの気持ちは分かってるんだよ。だけどさ、分かってても抑えられないんだよ、一樹は特に」
『…』
「なまえもあるでしょ?咄嗟に体が動いちゃうとき」

特に大好きな人となれば。
誉の言葉に一つ思い当たる節があった。
先週のことだ一樹が紙で指を切ったらしく小さく「って、」と漏らしたとき思わず走りよって大丈夫!?と聞いてしまった。
私の顔を見て誉は図星だと分かったらしくふふ、と笑った。

「ね、あるでしょう。だからあんまり怒らないであげて?」
『………分かった』
「…だってさ。一樹」

良かったね、なんて私の頭上の方を向いて誉は言うからまさか、と思って振り返る前に背中の方から腕が巻ついた。

「ごめん、」
『…私もごめんなさい』

じゃあ僕は行くね、誉はベンチから立ち上がって去っていく。
あ、後で誉にお詫びの品を渡しておこう。

『…守ってくれなくていいよ、私一樹の側に居れるだけて嬉しいから』
「…ん。俺も怪我して良いから…いやごめん出来るだけしないでくれ。心臓に悪いから」

弱気に前言撤回したその姿に思わず笑みがこぼれた。
守られるだけじゃすまないの

◎不知火一樹/なべっちさん
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