「なまえ、ちょっとい」
『っ…リコ先輩走ってきます!』
「ちょっ、こらアンタは選手じゃないから走らなくて良いのよー!?…って、行っちゃった…」
いか。
続けようとした言葉は返事もされず断られた。一目散に俺の前から駆け出したなまえ。
伸ばした手は行き場をなくし宙をさ迷う。
「ほーんと、見事に避けられてるわねー」
にやにや顔で見上げられ苛々が募る。
水戸部がなまえが出て行った扉と俺を交互に心配そうに見つめる。ああ、ほんとお前良い奴だよ。
「…うっせ、ほっとけ」
「マネージャーと選手の折り合いが悪いと全体に影響が出んのよ!さっさとモノにしちゃいなさいよね、こうガッと押し倒」
「お前女かよ、ほんとに!」
普通女が言う言葉じゃねーだろ…。
如何せん俺が小心者なもので逃げられると追いかけようとする気持ちが自分のなかで阻まれる。嫌われたら、という仮定の未来に。
「なによ、告ったんでしょう。返事は」
「………逃げられた」
そう告げると、カントクがはあ!?と大仰に声をあげた。
「あっちはマネージャーよマネージャー!なんで逃げられてんのよ!?だいたい」
「やめてカントク!日向泣きそう!!」
伊月が止めなかったらこれはきっと延々と続いたであろう。
はあ、とため息をつくと背中をバシッと叩かれた。痛ぇ。
「監督命令よ!なまえ連れ戻してきなさい!」
「おまっ、鬼か!」
「は、や、く!」
俺はビシビシ叩かれる背中を守るために体育館から逃げ出した。
「…なまえ」
そうして見つけた背中は俺が声をかけると背中がびくりと震えた。
駆け出そうとする背中に俺は待て!と叫ぶ。
「追いかけない。だから、お前も逃げんな」
『…は、い』
逃げない背中に俺は言葉を投げた。
「俺が嫌いなら、嫌いって言え。…俺はお前を怯えさせたかったわけじゃねえんだよ」
『ち、ちがいます…っ!』
振り返ったその顔は真っ赤で泣きたいのか怒りたいのかはたまたどちらでもないのか。
『あの、…っわたし、いままで日向部長にどうやって接してたのか分かんなくなっちゃって…!だから話しかけられて、頭ごちゃごちゃになっちゃって!』
精一杯俺に言葉を伝えてくれるなまえはいじましくて可愛いと思う。
『っ、で、でもあの…っ告白、嬉しかった、です…』
「………は?」
嘘だろ、おい。俺は思わず口元を押さえた。
「……そっち行っても良いか」
恐る恐る聞いた言葉にその言葉になまえびくりと震えたけれど小さく頷いた。
…やべぇ、幸せ過ぎて俺死ぬかもしれない。
君の心に近付く三秒前。
ぎゅうと抱き締めたら、なまえの身体は強ばったけれど俺を拒否したりしなかった。
「やべぇ、…死にそう」
『えっ!やだ、日向部長死なないで!』
冗談だったのになまえは本気で焦りだした。もう、こいつほんとダァホ。でも好きだ馬鹿。
◎日向順平/まめ吉さん
『っ…リコ先輩走ってきます!』
「ちょっ、こらアンタは選手じゃないから走らなくて良いのよー!?…って、行っちゃった…」
いか。
続けようとした言葉は返事もされず断られた。一目散に俺の前から駆け出したなまえ。
伸ばした手は行き場をなくし宙をさ迷う。
「ほーんと、見事に避けられてるわねー」
にやにや顔で見上げられ苛々が募る。
水戸部がなまえが出て行った扉と俺を交互に心配そうに見つめる。ああ、ほんとお前良い奴だよ。
「…うっせ、ほっとけ」
「マネージャーと選手の折り合いが悪いと全体に影響が出んのよ!さっさとモノにしちゃいなさいよね、こうガッと押し倒」
「お前女かよ、ほんとに!」
普通女が言う言葉じゃねーだろ…。
如何せん俺が小心者なもので逃げられると追いかけようとする気持ちが自分のなかで阻まれる。嫌われたら、という仮定の未来に。
「なによ、告ったんでしょう。返事は」
「………逃げられた」
そう告げると、カントクがはあ!?と大仰に声をあげた。
「あっちはマネージャーよマネージャー!なんで逃げられてんのよ!?だいたい」
「やめてカントク!日向泣きそう!!」
伊月が止めなかったらこれはきっと延々と続いたであろう。
はあ、とため息をつくと背中をバシッと叩かれた。痛ぇ。
「監督命令よ!なまえ連れ戻してきなさい!」
「おまっ、鬼か!」
「は、や、く!」
俺はビシビシ叩かれる背中を守るために体育館から逃げ出した。
「…なまえ」
そうして見つけた背中は俺が声をかけると背中がびくりと震えた。
駆け出そうとする背中に俺は待て!と叫ぶ。
「追いかけない。だから、お前も逃げんな」
『…は、い』
逃げない背中に俺は言葉を投げた。
「俺が嫌いなら、嫌いって言え。…俺はお前を怯えさせたかったわけじゃねえんだよ」
『ち、ちがいます…っ!』
振り返ったその顔は真っ赤で泣きたいのか怒りたいのかはたまたどちらでもないのか。
『あの、…っわたし、いままで日向部長にどうやって接してたのか分かんなくなっちゃって…!だから話しかけられて、頭ごちゃごちゃになっちゃって!』
精一杯俺に言葉を伝えてくれるなまえはいじましくて可愛いと思う。
『っ、で、でもあの…っ告白、嬉しかった、です…』
「………は?」
嘘だろ、おい。俺は思わず口元を押さえた。
「……そっち行っても良いか」
恐る恐る聞いた言葉にその言葉になまえびくりと震えたけれど小さく頷いた。
…やべぇ、幸せ過ぎて俺死ぬかもしれない。
君の心に近付く三秒前。
ぎゅうと抱き締めたら、なまえの身体は強ばったけれど俺を拒否したりしなかった。
「やべぇ、…死にそう」
『えっ!やだ、日向部長死なないで!』
冗談だったのになまえは本気で焦りだした。もう、こいつほんとダァホ。でも好きだ馬鹿。
◎日向順平/まめ吉さん