いっしゅうねん! | ナノ
寸止め
マネージャー業に専念していたそんなとき、だ。
「なまえ」
『ひょあ!』
「なに奇声あげとんの」
いや誰だって後ろから声かけられたら驚きますよ!
とくつくつ笑う世間様でいうところの…か、彼氏である光くんに反論しそうになったが、
「かわええ」
『っ…』
そんな言葉吐かないでください。心臓に悪いんで。
くっそう!いっつもにやりとかしか笑わないくせにこんな時だけ柔らかく笑うなんて卑怯だ!
『かわえくない』
「かわええ」
『…かわえくないもん』
ぷいっとそっぽ向くとふわりと温かくなった。
ああ、抱き締められたんだと納得して納得したら顔が真っ赤になるコース決定。
『ひか、るくん…離して…』
「いやや」
『………恥ずかしいし、部活中、だ、よ』
詰まり詰まりにそう申告するとぎゅうっと抱き締める力が強くなった。
「だって、まだ付き合って二週間やん。いちゃいちゃしたいわ」
『い、っ…ちゃいちゃって…』
「チューとか、したい」
ちゅーって、ちゅーって、ようは…そーゆうことですよね…。
『む、むむむり…!』
「…」
『うう…』
慣れてない。
だって彼氏いない歴=年齢の私がですよ。二年生で一番人気のある光くんと付き合えたことでさえ奇跡のレベルで調子こいてすいませんみたいな状況なわけです。特に先輩方。
「…別に、焦らんでもええから」
『っ、ひか…』
やっぱり断ったからだろうか。悲しそうに光くんが笑った。
じゃあ俺部活戻るわ、と私を解放し踵を返した光くん。
ああ、どうやってこの思い伝えればいい?
『光くん、!』
「なに…っ!」
叫んで追いかけて背伸びして、キスをした。危なげない足元は光くんのジャージを掴むことによりセーフ。
勢いがよすぎて歯がかちっとぶつかった。
「…ヘタクソ」
『だから慣れてないって…!』
「…なあ、もっかい」
俺からしてええ?そう聞いてくる光くんに対して俯いて頷くしかできなかった私の頬に冷たい手が添えられて、上を向かせられる。
少しだけ頬が赤くなった光くんを視界にとらえて私は目を閉じた、ら。
「おいこら財前!さっさと戻ってこいや!先輩を探しにこらせるとはどういうこっちゃ!!」
『え、』
「こら謙也!いまええとこなんやから邪魔…」
「はあ!?白石こそお前なにしと…え」
「…」
謙也先輩の声と、蔵先輩の声が聞こえて思わず目を開けると光くんの顔が般若のようだった。
『ひ、光くん…?』
「…謙也さんはあれッスか?俺に何か恨みでも?ああ、自分が彼女いない恨みッスか」
二度目のキスは寸止め
(このあと壮絶に拗ねた光くんが先輩達に土下座させていたうえに善哉を奢らせていた…光くんやりすぎでは…)
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