いっしゅうねん! | ナノ
足りない
「なまえ」
『うひゃあ!』
上から覆い被さられるように抱き締められた。
世間様の部類で長身な先輩とどう考えても小柄な私。
そりゃもう吃驚っていうか心臓に悪い。
『も…吃驚するじゃないですか!』
「ごめんごめん」
それでも錫也先輩のぎゅうぎゅう抱き締めてくる腕は力が一向に弱まる気配がない。
言っても無駄だということは理解しているので諦めて抱き締められる。
…というか、私も抱き締められるのは好きなわけで。
うー…これて変態っぽくない?と考えて油断していたら、ひょいっと抱き上げられた。
うにゃ!と訳の分からない声があがる。
「なまえは軽いな」
『うきゃあああ!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいです!降ろしてえええ!』
「あはは、可愛い」
キャッチボール!会話のキャッチボールをして欲しい!
あはは、じゃなくて!
「なまえ、好きだよ」
『っ〜〜〜…錫也先輩のばかっ』
「知らないのか?俺はなまえばかだよ」
そういうことさらっと言っちゃうからばか。
もう一回ばか、と言うと錫也先輩は困った顔をする。
『う…(私、その顔弱いのにいいい!)』
「なまえを抱き締められるなら、お前馬鹿でも良いよ」
何度抱き締めても、何度好きだと言っても
君が足りない
(酸素みたいに、)(なくては生きられない)
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