いっしゅうねん! | ナノ
痕跡
『誉さん、いま良いですか!?』
「うん?どうかした?」
襖の向こうから顔だけ出して覗くなまえ。
おいで、と呼ぶとこちらに寄ってくる。
『ど、どっか隠れる場所ないですかっ』
「隠れる場所?どうかしたの?」
答える前にばたばたと三つの足音が重なって廊下のほうかは聞こえる。
ああ、なるほど。
「こっち、おいで」
そう言って導いたのは僕の部屋の奥。そこから離れに出られるからきっと逃げれるだろう。
なまえが扉を閉めたと同時に鬼の3人が僕の部屋に押し入った。
「誉!なまえちゃんは!?」
「またおいかけっこ?」
姉さんや妹二人が持つもので大体の理由には検討がつくけれども。
「今日こそ…なまえお姉さまをもっと可愛くするの!」
「そう!私たちの手で…!」
その手にはメイク道具やら着物やらが握られていて。
確かにこんなに迫られたら逃げたくなっちゃうよね、なんて思い苦笑い。
「僕は知らないよ。あんまり追いかけ過ぎて出ていっても僕は知らないからね」
「あら、大丈夫よ」
姉さんはねえ?と奏と詩に問うと、二人もねーと返してきた。
「なにそれ、」
「誉が我慢できなくって追いかけちゃうでしょう?」
その言葉に僕は口を噤むしかなかった。…まったくの事実だったからだ。
君の痕跡を探すなんて僕には容易い
◎口調迷子
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