Halloween | ナノ
一樹先輩と


「なまえ!trick or treat!」

にやりと笑いながら私の前に手を差し出している一樹先輩。
私は片耳のみのイヤホンをもう片方に差し視線を読み途中の本に戻した。

「なまえ!?おいシカト!?おーい!?」
『…(このイヤホン、音シャットダウン出来ないな…)』

ぱらっ、とページをめくる。
うーん…この本はどうやらあまり面白くない。

「なまえ!」
『うわ…っ!』

いきなりかぽっと両耳のイヤホンを一気に抜かれる。いったいなあ…。

「なまえ!trick or treat!」
『私、英語わかりませーん』

しらばっくれるのみ。うん、そうする。
逃走しようとする私の腕をがしっと掴まれた。あ、捕まった。

「よーしよし、お前。悪戯されたいんだな?そうなんだな?」
『え、!?』

どうしてそうなるの!?
一樹先輩の腕のなかで暴れてみるが適わない。

『悪戯やです!お菓子あげるから放して!!』
「もう遅い」
『変態!ばか!』
「なんとでも」

にやりと笑って、まず手始めとでも言うように私の首筋にキスを落とした。


悪戯は今日だけ、なんて言うと思った?

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