Halloween | ナノ
梓と


「せーんぱい」
『うひゃああああ!!!』

いきなり顔の横から自分とは別の顔が出てきて吃驚しない人間はそうそう居ないと思う。
しかもふぅっ、と耳に息を吹きかけられるというオプションつきだ。

『あ、あああ梓くん!?』
「何ですか、人のことを幽霊みたいにー…」
『びび、ビックリしたあ!』

胸をおさえながらそう言うと先輩は可愛いですね、と言われた。どうしてそうなった。

『いきなりどうしたの?』
「やだな、なまえ先輩忘れたんですか?今日はハロウィンですよ?」
『あ…』
「trick or treat!」

笑顔でそう言う梓くん。ああお菓子貰いに来たのか。幸いにも鞄のなかに飴玉の袋が。

『はい、どーぞっ』
「…」

梓くんはお菓子が貰えたのに何故だか嬉しくなさそう。なんでだろう。

「…先輩は、言わないんですか?」
『あー…トリック オア トリート!』
「………僕、お菓子持ってないんですよね」

え。どゆこと。固まっていると梓くんが唇の片方を上にあげて、

「だから、悪戯してくださいね?せーんぱい」
『え、えぇっ!?』
「なんでも良いですよ」

にっこり笑顔の梓くん。あれ、梓くんってエスじゃなかったの。
早く、と急かされて咄嗟に出たのがこの言葉。

『秘密を一個教えてっ!』
「………良いですよ?」

え、あっさり。
目をぱちくりさせているといきなりがばっと抱き締められた。私、硬直。

「先輩、ほんとはね?ハロウィンだからじゃなくて」


貴方に会いに来ただけなんですよ。

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