100000 | ナノ
どうか

月ちゃんは、良いなあ…。
私は生徒会の自分の席に座っていて片手でペンをくるくる回していた。

視線の先には、仲良くお喋りな一樹会長と月ちゃん。

「ほんっとにドジだなあ、月子は」
「五月蝿いですよ!一樹会長!」

言葉だけは喧嘩なのに雰囲気は甘い甘い恋人同士のようだ。
目を逸らしたっていやでも耳に入って、脳でその事実を再確認させられる。

ああ、やっぱダメ。
はあ、とため息をついて絶えず休まずだったペン回しを止めた。
そしてそのペンを筆箱のなかに投げ入れた。

向かいに座っていた颯斗くん、翼と目が合う。

「なまえ…?どうしたんだ?」
『今日、体調悪いから帰るね』
「大丈夫ですか?」

心配そうに尋ねる颯斗くんに大丈夫だよと微笑んで私は傍らの荷物をとった。

生徒会室を出る際に一樹会長と目があったが私は何も言わずに目を逸らした。


その日から、私は生徒会へ行かなくなった。
翼や颯斗くん、月ちゃんからどうして来ないの、と訊かれたが曖昧に笑ってまた気が向いたら行くよ、と答えた。

気が向くのはいつになるのだろうか。そんなことは分からない。

一樹会長とはあれから一切会ってない。正しくは会わないようにしている。


それからある日の出来事。
生徒会へ行かなくなった私は放課後暇になってしまった。
何しようかなあ、なんてぼんやり考えながらうっすらオレンジに染まった廊下を歩いていると、前に赤色の特徴的な長髪を見つけた。

来た道を引き換えそうと踵を返すと「みょうじ!」と呼ばれた。
振り替えると陽日先生で、プリントを出すようにと言われた。

なんてバッドなタイミング。
きっと桜士郎先輩にも気付かれたことでしょう。
私の予想通り「なまえちゃん」と呼ばれた。

「どうして、生徒会に行かないの?」

ほら、やっぱり桜士郎先輩は知っていた。

『気が向いたら、行きますよ』
「いつ、気が向くの?」
『…さあ』
「くひひっ、質問を変えようか。
どうして行かなくなったの?」

桜士郎先輩にそう問われて私は俯いた。
でも今は吐き出したい気分なの。

『…行きたく、ないんです』
「…なんで?」
『月ちゃんと喋らないで、って言いそうになるから。
私ただの後輩なのに』

誰とは言っていないのに桜士郎先輩には分かったようで

「ああ、そゆこと」
『…キモいうえにうざいですよね、何いっちゃってんのお前みたいな』

でも見たくないんです、どうしても。
ぽろぽろと溢れる涙を親指が拭う。

桜士郎先輩だと思って顔をあげると、そこには予想だにしない人が居た。

「…ばかやろ」
『…かず、きかいちょ…?』

なんで、いや待て、今の聞かれた?
疑問を解消する前に私は所謂反射とかいうやつてくるりと後ろを向いて走り出した。

「は、おい待て!」
『お断りです…っ!』

待てといわれて待つ人は居ない。
だけれど追いかけてくる一樹会長との差はどんどんどんどん縮まっていく。
遂にはゼロ距離。後ろから抱き締められた。

「待てって、言ってんだろ…!」
『っ、ふ…!』
「っ…そんなこと考えてるなんて知らなかった。ごめん、泣かせて」

こちらこそ気持ち悪い女でごめんなさい。むしろこっちの方がごめんなさい、だ。

「でもごめん。正直お前が妬いてくれてたんなら俺すっげえ嬉しいんだ…」
『っ…』
「傷付けたけど、傷付けたんだど…俺がその傷埋めてやるから」

ぎゅうっと抱き締める力が強まった。
俺の傍に居ろ、と一樹会長が肩口に顔を埋めてそう呟いた。


どうか傷口を、貴方が埋めて
(…先輩の、ばか)(でも、大好きです…)


◎絢香さんリクエスト
ぬいぬいでNot彼女が月子にヤキモチを妬く/後ろから抱き締める/切甘

なんかもう訳の分からんことになってしまいましたww
すいませんです…!orz
こんなんでよろしかったら受け取ってくださいまし!
リクエストありがとうございました!!

2011.10.22 望


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