100000 | ナノ
欲張り

「ああ居た居た錫也!」

三連休の中日ということもあり、俺の勤めている天文台には人がたくさん来た。
そんな人混みをかき分けて来たのは俺の上司であり星月学園の先輩でもある人だった。
どうしたのだろう、と足を止めると先輩が

「お前の奥さん陣痛始まってるらしい!ったくあのハゲおっさん連絡が遅ぇんだよ!」
「ホントですか!?」
「ああ!だからさっさと行け!」

早退届けは俺が出しといてやるよ!
バシッと俺の背中を叩いて親指を立て笑った先輩に、ああこの人が先輩で良かったなあと感じた。

そしてその考えを頭の隅へすっ飛ばし俺は鞄やその他諸々を取りに行くためロッカーへ走った。


「ああくそ…っ!」

先ほども言った通り今日は三連休の中日。
当然ながら通行量は倍である。
いつもより進みの遅い車にイライラしながらも病院へと進んだ。


「すいません入院してる東月なまえは…!」
「ああ、東月さんの旦那さまですね。病室におられますよ」
「ありがとうございます!!」

病室に居る、ということはもう終わったのだろうか。
俺はなまえの病室に早足で向かった。


病室にはなまえが居て眠っていた。そしてその傍らには看護師さん。

「東月さんの旦那さんですか?」
「はいそうですけど…なまえは…」
「疲れて眠ってるだけですよ。赤ちゃん見に行かれますか?」

看護師さんがにこやかにいうが俺はそれを断った。

「もちろん見たいですけど、こいつが…彼女が起きてからにします」
『…ずや、…?』

狙っていたかのようになまえが目をうっすら開ける。
手がぱたぱたと呼ぶように布団を叩くので俺は迷いなくその手を握った。

「俺はここに居るよ」
『すず、や…』
「お疲れ様。一番辛いときに一緒に居れなくててごめん…」

少し乱れた頭を撫でてやりながらそう謝ると

『お疲れ様、って言ってくれただけで嬉しいから良いよ、許す』

へにゃりと力なく笑って、そう言ってくれた。
ほんとに、こいつはもう…。

「赤ちゃん連れてきましょうか?」
「あ…っ、すいませんお願いします」

くすくす笑いながら出ていく看護師さんにそういえば人前だったことを思いだし今更ながら少しだけ恥ずかしくなった。


「はい、どうぞ。元気な女の子ですよ」
『ありがと、ございます…』

看護師さんからなまえに渡される。タオルに包まっているその子は俺となまえの子で。
俺はベッドの端の方に腰掛けてなまえの肩を抱き寄せながら赤ちゃんの顔を眺める。

「可愛い、な…」
『そうだね…私じゃなくて錫也の家事上手なところは似て欲しいな』
「顔はきっとお前に似て美人だな」
『…錫也、』

名前を呼ばれてなまえの顔を見るとぽろぽろと涙を零していた。

『私に、この子をくれてありがとう…っ』
「っ、俺こそありがとう…この子をくれて、一生かけて、二人を守るから…っ」

泣いちゃうなんてちょっと情けないと思ったから
必死に瞼を雫が乗り越えないように堪えてなまえと赤ちゃんごと抱きしめた。

『…2人で、守っていこうね…』
「ああ…」

君も、この子も俺が守るから。
欲張りなんかじゃない

(パパ!)
(ぅ、わ…っ!追突してくるなって言ってるだろー)
(錫也、顔笑ってる笑ってるから)



◎ゆうさんリクエスト
"君のことになると"続編の錫也/「ありがとう。一生2人を守るから」

シチュエーションはちょこっといじくりました
…よかったですかね^^;

(レス

50000の感想ありがとうございます!
それは 私も です !!!! まじ理想の旦那だと思ってますてへぺろ☆←
更新頑張ります!)


また機会がありましたらリクエストしてください^ω^
リクエストありがとうございました!



2011.10.03 望



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