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きみの瞳

「なーみょうじ!」
『あはは…っていった!痛いよ!』

悪ぃ悪ぃとまったく悪がってない様子で謝る男子を睨みながら叩かれた頭を擦る。

「いやー撫でたつもりだったんだけどな」
『…だから彼女できないんだよ』
「………みょうじが俺を苛める」

周りにそう訴えると、皆はお前が悪いと笑って言った。
馬鹿だなあ、なんて思っていると入り口付近でみょうじー!と呼ばれた。

『なにー?』
「彼氏が呼んでるぞー」

思わず固まってしまう。
ニヤニヤ顔のクラスメイトを追いやって錫也くんの前に立つ。

『ど、どしたの?』
「…会いたくなったから来てみました」
『っ…』

ぼっ、と顔が熱を伴って赤くなる。フェミニストフェミニスト…!錫也くんはフェミニスト!
赤を抑える魔法の呪文を唱える。それで顔の赤みが治まった例はないけど。

『う、…う、…っ』
「はは、ごめんごめん。あのな、月子からこれ貰ったんだけど…」

そう言って影から出したのは二枚の細長い紙。
一枚受け取って文字を読む。

『遊園地…?』
「なまえが良かったら今度の日曜日一緒に行かないかなって思って」
『い、行きたいっ』

じゃあ当日学校前でな、と頭をぽんぽんと撫でられて錫也くんは教室前から行ってしまった。
くるっと教室の方へ体の向きを変えるとクラスメイトが全員ニヤニヤ顔。

『な、なに…』
「…モテる男はああいう頭の撫で方をするんだなと俺たちは学んだ」

錫也くんみたいになるのはうちのクラスメイトには無理だと思うとは言わないでおいた。


「なまえ、俺飲み物買って来るけど飲み物何が良い?」
『え…あ、りんご…?』

錫也くんの気配りは完璧で、にこっと笑ってちょっと待っててと言って自販機のある方へ走っていった。
私はベンチに座って錫也くんの走って行った方をぼんやり見ていた、ら。
前からねえねえと喋りかけられた。男二人組に声をかけられた。

『はい?』
「ここに行きたいんだけどさー、道分からないから教えてくれない?」

片方の人が指したのはパンフレットに載っているアトラクションの一つで。
私が言葉で説明すると分かんないよーと言ったうえに連れて行ってくれと頼まれた。

『え、っと…私人待ってて…』

彼氏と言葉にするのはちょっとだけ恥ずかしかった。

「だーいじょうぶ大丈夫!」
『え、あ…っちょっと!』

ぐいっと引っ張られ強引に立たせられる。
私が抵抗しても前の男はお構いなしに私の手を掴む。離さないとでも言うように痛いと感じる力で。

『やだ…っ』

思わず涙がぽろっと落ちそうになったとき、何かに抱き締められた。
もう一人の男かと思って思わず体を強張らせると上から聞こえてきた声に安心する。

「離せよ」
『す、ずやく…』

聞いたことないような低い声で私の手を掴む男を威嚇する錫也くん。
顔をあげようとしたらぎゅっと頭を押さえ込まれた。
いてぇとかおい行こうぜとかそんな声が聞こえて、ああどっか行ったんだと安心して。

『錫也、くん…?』
「…あのさ、もっと彼女の自覚持ってよ」

さっきの、心臓止まるかと思った。
そう言われて私の心臓も止まるかと思った。

「なまえの前じゃかっこつけたくてクラスメイトにさえ妬いてるなんて言えないと思ってたのに…」

そんな事知らない。
私は錫也くんの服をぎゅうっと握る。

「もう無理、…妬きすぎて死にそう」

そう言われてやっと錫也くんの両手で私の顔をあげられる。
切なそうに目を細める錫也くんと目があった。

「俺以外の男、見ないで…?」
きみの瞳さえ僕のもの
(妬きすぎて頭が馬鹿になったんだ)


◎楯早矢凪さんリクエスト
錫也で「あのさもっと彼女の自覚もってよ」他2つ

偶然リクエストを頂いた直前ぐらいにですね
「なみだ/うさぎ」を見ていたので
うおおおお…!な感じでしたw^▽^
ちなみに私は鳴海くんも好きですが天野くん派です

すっごい長くなってしまいましたが
リクエストありがとうございました!

2011.01.01 望


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