100000 | ナノ
幕引き

「全治一週間、ってとこだな」
『…あは』

琥太郎先生の言葉にあはと笑う。
頭を掻く右手にはぐるぐる巻きの包帯が。
未だに笑いながら「やっちゃった」と言っていると我らが部長の宮地から頭に鉄拳を食らった。

「おまえは3年だろうが!!しかも予選の2日前だというのに木登りとか馬鹿かっ!?むしろ馬鹿だ!!大体何でわざわざ2日前なんだ!?馬鹿なのか!?馬鹿としか言えん!!」
『いやあの…ね、うん、ごめんお母さん』

言い訳をしようとしたら宮地の纏う黒いオーラが増えた気がしたので口をつぐんだ。
なにお前、いつからスタンド使いになったの。

『だいじょーぶだって、月子居るんだから』
「っ…」
「お前なあ…」
「まあまあ宮地。とりあえず落ち着けよ」

犬飼が宮地の肩を引く。
白鳥も「そうだぞっ!!」と反対側の肩を叩く。

「これが怒らずに居られるかッ!!」
「はいはい。じゃっ、なまえ安静になー」
「手首使うなよ!」

白鳥と犬飼が宮地の背中を押し、保健室から出ていった。
いまだに廊下からぎゃいぎゃい言い合っている声が聞こえる。
おーい、今は授業中ですよ。
馬鹿だねえ、けらけら笑いながらそう言うと相槌の代わりにうえっ、と嗚咽が返ってきた。

「なまえちゃん、ごめ…っなさ、っ」
『…良いよ。月子のせいじゃないんだから気にしないで。大体助けたのに泣かれたら私の手首が怒るよ』
「っ、でも…!」

ほんとは、怪我をしたのは木登りしたからじゃなくて
月子が絡まれていてそれを助けに入った。
そうしたらこけた時に手首をぐにゅりと踏まれたのだ。(ワザとじゃないとは思うけど)

『泣くんだったらインターハイで優勝したとき、だよ』
「っ…!」
『応援、行くから』

分かった、絶対約束する、優勝する。
目元や頬ををごしごし擦りながら月子はそう言った。

『約束だよ。ほらもう授業始まってるから戻りな』
「うん…っ」



『…』

やだな、一人になるとやなこと考えていけない。
私ってやな子。いや元からだけどさ。

ああもう、やなこと考える元凶のこんな手なんて要らないよ。
壁に思いっきりぶつけてやろうとふりかぶったら、ぱしんと最高到達地点で何かに遮られた。

「…なまえ、なにやってるんだ」
『!、なんだ、東月か…別になにもー』
「…馬鹿。…月子がなまえに美味しいもの、作ってやれって言うからなまえの好きなシフォンケーキ持ってきた」
『お、ありがとう』

東月の持っていた鞄の中からラップにくるまれたシフォンケーキが出てきた。
ありがたく頂くと東月のシフォンケーキはふわふわで美味だった。

『…で、どしたの』
「…バレバレか」
『なんとなくねー』

大方月子が私の心配してくれたんだろう優しい子。大好き。
東月ははあとため息をつきながら私の横に腰かける。

「泣かなかったんだってな、お前。しかもさっきの…手首悪化するだろ」
『…泣いたってしょーがないじゃない。どうにもならないからさ』
「…泣いて良いんだぞ。悲しいときは」

別に、悲しくなんてない。
そう言うと強がりばっか、と返ってきた。

「じゃあ俺がお前に泣いて欲しいって、そうお願いしたら泣いてくれるだろ。お前は優しいから」
『優しくなんて、ないよ』
「優しいよ。だって泣いたら」

月子が悲しむから泣かなかったんだろ。
なんで、ばれてんの。こいつエスパー?

「お前の考えなんてお見通しだよ。な、だから俺の為に泣いて」
『…ばか』
「はいはい」


強がりの幕引き
(お前の強がりなんて)(バレバレだから)



◎猫叉さんリクエスト
「泣いていいんだ」/切甘/怪我した手を叩きつけようとして止められる

なんかよく分からないことになってしまったので解説という名の言い訳を←
主と錫也は友達以上、恋人未満なあれ。
主(→)←錫也だったら面白い←

主は3年の弓道部で最後のインターハイで
怪我した原因は宮地だけ知らなかったっていうアレです

わけの分からんことになったのは私の文才のせいです


猫叉さんリクエストありがとうございました!!(*´▽`*)



2011.11.28 望


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