なんで!
『あ、木ノ瀬くんだー』
「ああ、なまえ先輩って…だから名前で呼んでくださいって言ってるのに…」
そうでした。何回言われても直らないなあなんて思いつつ梓くんと呼びなおした。
「ていうか何でそんなに汚れてるんですか」
『えーっと猫ちゃんと戯れてたから』
ぱんぱんっと制服の裾を叩くと土ぼこりが制服から舞い出る。
『もうね、ふわっふわで可愛いの』
「へえ、それにしても草までついてるし…後ろ、向いてください」
言われるままに向きを変えると梓くんが背中に着いた埃や草まではらってくれる。
『ありがとー』
「いえいえ、役得でしたんで」
なにそれ?どういう意味?と聞き返す前に梓君の後ろから「なまえ!」と呼ばれた。
『あ、一樹先輩だ』
「…ちっ」
「おい木ノ瀬、聞こえてるぞ」
そういう一樹先輩に梓くんはえ?なんのことですかと爽やかに笑った。
「俺の彼女、返してもらうぞ」
「別に俺の彼女を強調しなくたって良いんじゃないですか」
私はぐいっと手を引っ張られ一樹先輩の隣に収まった。
「行くぞ」
『あ、はい』
「なまえ先輩、さようなら」
『あ、梓くんばいばい!』
何故だか怒っているような、そんな雰囲気だ。なんで怒っているんだろう、そう思いながら私は手をひかれた。
何度も声をかけても一樹先輩は反応してくれなくて何処に行くかも教えてくれなくてそれで何でか悲しくなって。
『っ、…』
泣いてたら面倒だと思われるのに、だから気づかれないように私は手の甲で涙を拭う。
それでもその動作で一樹先輩は気付いたらしくなんで泣いてるんだ、と言う。
『だ、って…っ一樹先輩怒ってる…っ』
そう言うと視界が滲むなかで一樹先輩がバツの悪そうな顔をするのが分かった。
そしてああー…っと唸りながら頭を掻きまた歩き出した。
生徒会室に到着すると、手が離され私は少し寂しいなと感じながら生徒会室の中に進む、と後ろから抱き締められた。
『え…』
「お前さあ、…もっと危機感もてよ」
『え、え…!』
いまだに一樹先輩の彼女という立場に慣れなくて抱き締められただけで真っ赤になってしまう。
「俺はいまだに心臓がいくつあっても足りないぞ…」
『…ごめんなさい』
なにがどうなって一樹先輩の心臓に負担をかけているのか分からないけれどとりあえず謝っておいた。
「馬鹿、お前まったく分かってないだろ」
『う…はい、恥ずかしながら』
そう言うとはあとため息をつかれた。
「あのなあ、お前を狙ってる野郎がいっぱい居るってことだ!」
『え、でも…私もう一樹先輩の彼女ですよ…』
「奪い取ろうとか考えてる奴も居るってことだ!どっかのクソ生意気な後輩とかな!」
くっそアイツ…ことあるごとに狙いやがって…!と後ろで呟いている一樹先輩。
『で、でも大丈夫ですよ!』
「…なにがだ、大丈夫じゃねえだろ」
『私一樹先輩しか見えてないですもん!』
そう言うと、空白が数秒あって「そういうところだバカ!」と頭を叩かれた。
なんで!
(い、いたい!)(バカ、お前…食うぞ!?)(私おいしくないです!)
◎紺玖さんリクエスト
不知火の甘夢
遅くなってしまい大変申し訳ないです…!!
ほんとは犬飼で挑戦してみようと思ったのですが私にはまだ難しかったです(´^ω^`)←
リクエストありがとうございました!(*´Д`*)
2012.04.05 望