砂糖水
「みょうじさん、」
『あ、東月くんおはよう』
俺が声をかけるとふわりと笑う顔。
その顔が見たくて、俺は毎朝同じ時間に来る彼女に会うために通学時間を月子たちとは少しだけずらした。
たった一人でこの星月学園に入学したみょうじさん。
同じ女子ということと同じ天文科ということで必然的に月子と仲良くなり、そして結果的に俺や哉太とも仲良くなった次第だ。
そしてみょうじさんはクラスに置いていかれることもなく、大事な一員として存在している。
月子に接するように、俺に向けてくれる言葉や笑顔の数々。
何時から、惹かれていたのかなんて覚えていない。
『東月くん、今日もお弁当?』
「ああ、もう日課みたいなものだからな」
『大変だね、私は自分のだけだから良いけど…』
自分のを作っている、ということは。
「今日は誰と食べるんだ?」
『今日は宮地くんと犬飼くんと白鳥くん』
彼女の人気は今や全校に伝わりつつある。
「ちなみに明日は?」
『木ノ瀬くんに天羽くんに小熊くん』
「人気者だな…」
『そんなことないよ、多分誘いやすいだけだと思うの』
ふふっと笑いながら口許に手を持っていく。
誘いやすいだけで誘わないとは思う。これも全て彼女の人柄だ。
「月子が寂しがってるんだ。また一緒に食べたいって」
『あはは、じゃあ明後日は空いてるからお邪魔して良い?』
もちろん、そう伝える俺にありがとうと笑うみょうじさん。
ああやっぱり彼女が好きなんだなあと感じた。
だから偶然通りかかった廊下で青空くんと楽し気に笑うみょうじさんを見かけたとき、良からぬ感情が涌き出た。
俺のじゃない、んだけどさ。
分かってはいるつもりで、だけれど納得できるかどうかは別の話になってくるわけだ。
というようなことを放課後まで悶々と考えているとこれまたタイミング悪いというか、みょうじさんが教室に入ってきた。
『東月くん』
「みょうじ、さん」
ぶっちゃけ最低なことを考えている最中で、俺は一方的に気まずい。
『一人でなにやってるの?』
「みょうじさんこそ、どうしたんだ?」
『私は…』
なんとなく、そう笑うみょうじさんの頬は少しだけ赤い。
好きな奴にでも会ったのかな、なんて考えた。そういう理論で言えば俺の頬は現在進行形で赤いことになるのだろうか。
ああ、ということはまたあの笑顔を誰かに向けてきたってことか。
「…みょうじさん、」
『はい?』
「好きだよ」
どうしても耐えられなかった。もういっそ俺のものにしてしまおうか、なんて考えた末の言葉だった。
「みょうじさんが好きだ」
『そ、れは、友愛とか…』
「じゃないよ。俺はみょうじさんと付き合いたい」
そう伝えると真っ赤になる顔。
もしかしてこんな顔を見れたのは俺だけかもしれない。
もしこれで断られたとしても満足かもしれない。ああでもぎこちなくなるのは嫌だな。
「わたし、も、すきです…」
そんな事後のことを考えていたから咄嗟に反応できなかった。
いまなんて?
『わた、私も東月くんがすきです…』
うそだろ?
これは、うん、あれだ。俺の見ている都合の良い夢か幻聴かなんかだ。そうに違いない。
自己完結しようとした俺にストップをかけたのは紛れもなくみょうじさんでなんと彼女は俺に抱き着いたのだ。
リアルな感触、これが夢なわけあるのか。
『からかってる、とかじゃない…?』
「そんなこと、するわけないだろ」
声が震えている気がする。カッコ悪いな。
「好きだよ、…きみが一番、好きだ」
『っ…』
真っ赤に染まっていく顔、ああやっぱり可愛いな。
そう思いながらじーっと見ているとみないで、と顔が覆われた。
『い、いま…ぜったい真っ赤…!』
「うん、真っ赤」
だけどそれが見たいと言ったらきみは今度はどんな顔をするのだろうか、って見てみたいなって思うんだ。
砂糖水に溺れて
(俺だけに、)(見せてくれれば良い)
◎凪さんキリリク
オカンに告白される 月子繋がりで犬飼や宮地などと仲が良い
隊長!(凪さん)
こんな感じになりましたがどうでしょう!
独占病を発揮する錫也さんたまらんです…!
ちなみにオカンに告白され隊隊員です(´^ω^`)
リクエストありがとうございました!(`・ω・´)
2012.05.16 望